第24話

アパートに着くと、すぐに七美をベッドの上に押し倒した。俺だけを映す潤んだ瞳。少し熱を帯びたマシュマロ頬っぺ。


「狭いけど、我慢して」


俺は、彼女の横で猫のように丸まった。


「よちよち。いい子……いい子……。さっきは、恐かったよね。でもタマちゃんが、最後まで私を救おうとしてくれたから、こんなに幸せな今がある。一生かけて、恩返しするね」


胸に顔を埋めた俺の頭を撫でる七美。


「恐かったのは……お前を失うことだけ。……別に死ぬことじゃない。あのまま七美がさ、夢神って男のモノになったら、二度と会えないから。そっちの方が、死ぬよりツラかった」


「………私ね、実はタマちゃん以外の人とはエッチ出来ない体なの。だからね、あのまま結婚してたら、今夜……確実に死んでた。私も自分が死ぬことは恐くないよ? 恐いのは、大好きなタマちゃんが死ぬことだけ。番条さんにさ、二百五十億を払って副会長にして、タマちゃんを彼女の奴隷にして、記憶を消した。そこまでは未来通りだったのに……。私との関係が切れたら、アナタは平和で安全な普通の生活を送れて、幸せになれるはずだった…………」


「バカだな、お前。何にも分かってないよ。俺はさ、平和な生活なんて望んでない。七美がいない世界は、何もない砂漠と一緒。そんな世界で、のほほんと長生きしたくない。絶対に」


七美のドレスの脱がし方が分からない為、仕方なく強引に引き裂き、下着姿にした。されるがまま。抵抗する素振りは一切ない。


「あ~ぁ………。この服、五千万くらいするのになぁ。デザイナーさん、これ見たら激怒だよ~」


「っ!? 五千。ん……何? えっ」


「大丈夫だよ。心配しないで。いつも千円くらいしか持ってないタマちゃんからしたら、ショックな額だよね。それよりも……ねぇ、ねぇ。久しぶりに、あの甘えん坊タマちゃん、私に見せて……」


明日から、また学校。休みたいなぁ。一日中ずっと、こうしていたい。


とりあえず明日、二川さんと番条さんには、今日のお礼を言わないとーー。


「もしかして今、他の女のこと考えてる?」


「い、いやいや。全然っ」


「タマちゃん……。私に嘘は通用しないよ。腐っても私、神華の人間だからね」


七美のひんやり冷たい柔肌を貪る。


「っ! そこ……そんなに…ペロペロしちゃ……ダっ…メ…」



神華の人間ーーーー。


今後は、七美の両親に会う機会もあるだろう。彼等に対する対応を少しでも間違え、機嫌を損ねたら殺されるかも……。俺は、まだ首の皮一枚繋がっている状態に過ぎない。七美とこれから幸せに暮らす為。

近い将来、俺も悪魔の仮面を付けなければいけなくなるかもしれない。


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