第18話 幸せの黄色い新幹線

「ああ! どうしよう! どうすれば良いんだ……これじゃシェイラを助けられない……」


 俺はだいぶ焦っていた。だってシェイラの死刑が始まる時間の20分前だからだ。


 ファーーーーン!


 最悪な時間が刻一刻と迫りくるそんな中、空から警笛の音が鳴り響く……その音には不思議と、どこか安心感があった。


 7両編成の黄色い新幹線が俺達に向かってやって来たのだった。それは銀河鉄道の夜のSLのように空を駆けていたのだ。

空を駆ける新幹線は、風を起こしながら俺達の横を走って行った。風は頬を優しく撫でていく……。


 その空を駆ける、黄色が特徴的な新幹線は、好きではなくても皆知っている新幹線だった。その名は、ドクターイエロー……。詳しく言うとこれは昨日引退したドクターイエローT4編成だ。


 その新幹線には一つの窓に一文字ずつ、文字が貼られている。それは彼のラストランの時貼っていた、ありがとうと言う感謝の言葉だ。


 ドクターイエローは、まるでレールがあるかのような挙動で俺達が乗りやすい位置にゆっくりと着地したのだった。その新幹線からは人間の気配など微塵も感じなかった。

 そして俺はドクターイエローの自らの意思で走り出して、来たのだろうと予想する。


「ドクターイエロー……もしかしてお前……シェイラのとこまで連れて行ってくれるのか? 俺達を……」


 ファーン!


 警笛を鳴らしたあとにドクターイエローは、運転台の扉をゆっくりと開いた。どうやら警笛は彼なりの返事らしい。

 俺と不死原はこの一人で動く新幹線に出会う、不思議な状況に戸惑いつつも助走をつけて、ジャンプしてその新幹線に一人ずつ順番に乗車した。

 さすがに新幹線に乗り込むためのホームがないから跳び乗るしかなかったのだ。


「ここに……乗れば良いのか……? ドクターイエロー……」


 ファーン!


 俺は運転台のシートに腰掛ける。シートは一つしかなかったので不死原は運転台の床に座っていた。さすがに不死原に床に座ってもらうのは少し抵抗感があったが彼は全く気にしていないようだ。


「よし! ドクターイエロー……シェイラのとこに連れてってくれ! 全速力でな!」


 ファーン!


 俺達がさっき乗っていた、廃車寸前までこわれた在来線を横目にドクターイエローはシェイラが居る所をめざして浮き上がり、空を駆け始める。


 ドクターイエローは加速していく……そして時速270キロを突破したのだった。それに俺はひとり興奮する。

 だってこのペースならシェイラが居る場所に到着できるからだ。そして彼女が殺されるのを阻止できる。


「お前……270キロも出るのか! その調子だ、頑張ってくれ!」


 ファーーーーン!

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