前作主人公ですが続編がクソゲーしてるので手助けしています
サドガワイツキ
第1話 クリア後の断罪タイム
『突如として世界に現れた魔王の軍勢は世界を支配せんとばかりに暴れまわったが、とある田舎暮らしの少年が立ち上がり、そして世界中を旅する中で仲間を得ながら魔王軍の将を撃ち、支配された土地を解放し、国と国、人々の心を繋いで人類連合軍の旗頭としてそしてついには魔王軍を本拠地である魔王城へと追い詰めるまでに至った。
人類の希望というべきその少年の名前はアルス。人は彼を“勇者”と呼ぶ』
……アニメ版ならそんなナレーションでも流れているんだろうなぁ。
ようやくたどり着いた魔王の間の扉を前にしてぼんやりとそんな事を考えてしまっていた。
この世界での俺の名は勇者アルスというが、俺は異世界から来た転生者である。
転生者としてこの世界に生まれ育っていた当初は自覚がなかったが、俺が転生したこの世界は大作RPGシリーズ――― “ネバーティアーズリベンジャー”通称“NTR”の初代とも無印とも呼ばれるNTR『Ⅰ』の舞台によくにた異世界だった。
『NTR』はノベル、コミカライズ、アニメ、ついでに2.5と呼ばれる舞台やミュージカルにまで派生した一大ジャンルであるNTRシリーズだが、その根幹であるゲーム版は生前の俺が愛してやまなかったコンテンツでもある。
ナンバリングタイトルは発売されるたびに何周もしてすみずみまでやり尽したので攻略本やサイトをみなくても大抵の情報は頭に叩き込まれていたので、概ねゲームのシナリオ通りに立ち回りながら魔王軍との戦争を戦い抜き、こうしてラストダンジョンである魔王城を踏破しラスボスである魔王との最後の戦いをはじめようとしていた。
旅の中では良い事もい悪い事も色々あったなぁと思いつつ腰に下げた聖剣を抜き、同行しているパーティーの仲間と顔を見合わせる。
金髪を刈り上げ、筋肉質な身体を鎧に包んだ青年は戦士パレオス。
薄紫の巻き毛に凛とした顔立ち、裾の大きくスリットの入ったローブ姿で、肉感的な生足が視線を誘うのは 魔法使いのメニット。
そして栗色の髪をショートボブにし、くりくりとした瞳をした可愛らしい少女は幼馴染で聖女のフィオ。白を基調とした法服を身にまとっているが、その服の胸元に造られたふくらみがスタイルの良さを言外に主張している。
「皆、油断せずいくぞ。これが俺達の最後の戦いだ!!」
気合と共に魔王城の間に突入した俺達の最後の戦いが幕を開けた。
魔王と俺達勇者パーティ、がそれぞれに手を変え品を変えて繰り広げられた死闘は一昼夜にもおよんだが、俺のゲーム知識もありゲームのシナリオ通りに魔王を追い詰め、終わりを迎えようとしていた。
「これで終わりだ、魔王!!」
乾坤一擲の力を込めて放った斬撃が魔王の身体を深く切り裂き、断末魔と共に魔王は力尽きた。
「やったわね、アルス」
そう言って嬉しそうに笑いかけてくるフィオ。
「これで世界も平和になったな!!相棒!!」
勝利の余韻を噛みしめながら馴れ馴れしく肩を叩いてくるパレオス。
「ふふっ、それじゃあ……城に帰って王様に報告ね。可愛いお嫁さんを3人も娶るんだから、盛大な結婚式にしないとね。アルス♪あぁ~楽しみだわ~」
蠱惑的な笑みを浮かべているのはメニット。
フィオ、メニット、そしてここにはいない王女リリィの3人は俺の婚約者でもある。勇者として神託により選ばれた俺は、魔王を倒した暁にこの3人の婚約者を妻に迎え入れることになるという事になっている。
……一見するとハーレムエンドのようにもみえるけれど案外そうでもなかったりするんだけどね。
「……そうだな、本当に―――――――楽しみだ」
俺は心に秘めた本心を隠しながら、いつもと変わらない笑みを浮かべた。
王の城に戻り魔王討伐を報告すると、王から労いの言葉と共に約束通りに婚約者たちとの祝言をあげるがよい、国を挙げて盛大に祝おうと我が事のように喜んでくれていた。
その報告の場には王だけでなく全ての王妃や王子、姫たちが並び、他にもこれまで旅してきた中で知り合った世界中の国の王達もまた、水晶からの映像伝達魔法の向こう側で、そんな光景を笑顔を浮かべながら見守っている。
――――待っていたぜ、この瞬間をよぉ!!!!!!
文字通りに世界中が見守るで俺は懐から鈴を取り出し、王に言葉を返す。
「王よ、その話をする前にこの鈴の紹介をさせてください。これは“お願い女神様(プリーズオーマイゴッド)”。死者の蘇生や永遠の命といった人の命にかかわる願い以外を3つまで偉大なる女神に叶えてもらえる奇跡の新造道具です」
魔王討伐の旅の中でこっそりと手に入れておいたこれは、これから俺が行う断罪にどうしても必要なもの。パーティーの連中に隠れながら入手しここまで秘匿していたものだ。
パーティーのフィオ、パレオス、メニットもそんな道具をいつの間にと驚いているが……これはお前らを断罪するために手に入れておいたものなんだ、バラすわけないよなぁ。当然だよなぁ??
「ふむ?勇者アルスよ、その道具を以て何をするつもりだ」
俺がこれを使って何かをするつもりだという事を理解した王の質問に、笑顔と共にさらに言葉を続けた。
「はい。私はこれより女神の奇跡を以て裏切り者の下劣な嘘を暴きたいと思います。―――女神よ、我が願いを聞き届けたまえ。“この場にいる全ての者は嘘をつくことはできない”!!」
俺の言葉に天上から祝福の鐘の音がかえってきた。これは女神様が俺の願いを聞き入れてくれたという事である。
……そしてようやく、俺が『全てを知っている』という事を察したフィオ、パレオス、メニットの3人とリリィ王女の顔色がサッと青くなる。だがそんな様子を無視して俺はパーティ3人の方を向いて穏やかに告げる。
「パレオス、メニット、リリィ王女、そしてフィオ。これから始まるのは色に狂った愚か者たちの断罪の時間だ。待たせたな、お前たちの死が来たぞ??」
そう、パーティメンバーであるパレオスは、メニット、リリィ王女、そしてフィオの3人と裏で浮気―――NTR行為をしていたのだ。今此処にいるのは最早勇者パーティと一国の姫ではない。……間男と、婚約者を裏切った3人の女達。
さぁ、パーティの始まりだ!
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