第3話 盟約締結

「つ、付き合う!?そ、それはどういう意味ですか!?」


「何焦ってるの?もちろん恋愛的な意味だよ」


 困惑している俺に爆笑しながら、彼女はそう言った。  


 しかし、付き合えってどういうことだ。


 俺は既婚者だし、事件の情報を貰う対価にしてはあまりに軽すぎる。


「そんな事をして、何になるんですか。あなたみたいな美貌の持ち主なら、どんな男でも好きにできますよね」


 俺は当然の疑問を、土田に投げかけた。

 すると、土田は顔を赤らめながら、俺の疑問に答えた。


「そんなの決まってるじゃん。君が好きだから、どうしても一緒にいたいから、それだけだよ」


 …衝撃だ。

 こんなに美人な女性が俺に好意を抱いているだと。

 だが待て!

 俺は既婚者だし、昨日妻を失ったばかりだ。

 もういなくなってしまったが、今でも妻を愛している。


 この要求には出来れば乗りたくない。


「あの、もう少し別の条件ってないですかね」


 希望を込めて、聞いてみた。


「無いよ、この条件以外は。もし乗らなかったら君は犯罪者だねぇ」 


 …希望をもった俺が馬鹿だった。

 コイツは悪魔か何かなのか。顔が笑ってねえもん。


「君にとって、怜奈さんは特別な存在だった。今でも愛している。そんなことは知っているんだ。だから君にとって、この条件を飲むことは"不倫"することと同義の行為。そう思っているんだね」


 …核心を突かれてしまった。

 そうだよ、俺はこの条件を…飲めない。


「でもね、この条件は"不倫"みたいに生優しいものじゃないんだ。このままじゃ君、本当に殺人犯にされちゃうよ。そんなこと、怜奈さんは望んでいるかな?犯人も明かされず、君が捕まる。それで、怜奈さんの無念は晴らされるかな?」


 …本当に痛いところを突いてくる。


「これは"盟約"だよ。愛している妻の無念を晴らすため、私と付き合う。"盟約"なんだからそれ以上も、それ以下もない。ただ純粋な恋人になるだけだよ」


 …"盟約"か。上手い言い表し方をするな。

 だがどの道これ以外の突破口はないんだ。


「怜奈のためだ。その盟約乗ってやる。恋人にでもなんでもなってやるよ」


「ふふ、ありがと」


 こうしてこの場で、"盟約"は締結された。


 だがこの時俺はまだ知らなかった。この"盟約"の本当の意味を…

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