第10話 アパートへのいざない
その日の夜、
特に予定もないし、断る理由もない。
仕事を終えてそのまま喫茶店へ。
そこで夕食を軽く済ませると、コンビニに寄ってから二人はアパートへと向かった。
最上階五階の角部屋。
そこが、彼女の
アルコール度数は
明日は土曜日で仕事は休み。
開放感に踊る喜びが胸中を占めつつある。
どこか抑え難い衝動。
理性は大人しめに
アパートの敷地まで約十メートルの位置。
そこで目的地の建物を指差した
「相変わらず黒っていうか緑色だよね。このアパート」
夜の暗がりが黒も緑も判別がつきにくい
その周りでは、漆黒に染まる木々の枝葉によって、夜空の
「あはは、本来はクリーム色なんだけどね。しょうがないよ。管理人が業者に
築年数は三十年を超え、これまで外壁塗装など必要なメンテナンスが講じられて小綺麗な外観を保っていた。
しかし、数年前から地中から壁面に対して
「何か理由でもあるの?」
「維持費とか修繕費なんかをかけたくないって管理人は言うんだけどね。でもまあ結果的に家賃をだいぶ抑えてくれているからありがたいんだけどさ」
確かにここの家賃は相場の十分の一だ。
以前、何かの話のついでで
「引っ越そうとは思わないの?」
「彼氏とかいないし、今は別にそのままでいいかな」
「私がいるじゃない」
「あはは、こうちゃんは親友だよ。こんな私に付き合ってくれてありがとね」
――親友、か……
すこし引っかかる思いが心底にもわりと
初めてここを訪れたのは三年前。
最初はたわいも無い話ばかりで、職場や上司の
お互い未婚で、付き合っている異性もいないから、日頃から気楽に話し合える
三年前の当時は一階部分の角だけに
それから月日が経つにつれ、ここを訪れる度にその茂みは執念深さを増しているように見て取れる。
まるで何者かに精力を供給されている印象さえ、脳裏に植え付けられるようだ。
今では、
それは異様な光景として映るだろう。
飽き足りない成長の果てに応えるように、伸ばす
それは不気味に
整った目尻から頬へと流線が手元のスマートフォンの明かりでぼやけ、色素の薄い右眼はどこか憂いを帯びている。
その仄暗い眼差しに、
恐怖や
一体どうしてここまで
昼間のアパートの外観は目を
慣れというのは恐ろしいものだ。
何も夜だけを選んでここへ来ているわけではない。
日中の目のやり場にも慣れてしまえば、どうということはない。
環境の生き物という便利な言葉を使えば、少しは分かち合える余地を見出せるのだろうか。
でも、私たちの左眼には夜だからこそ見える世界がある。
ひぃちゃんも分かっているよね、きっと。
「日中だと
振り向かないまま背中で応える。
「うん。昼間は避けてる。それに……」
「それに?」
少し間をおいて
「夜だと、雰囲気出るから……」
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