声が明かされる時②
そして、今に至る。
今日は週の真ん中だ。飲みすぎると明日以降の仕事に支障が出ると思うと酒の進みも遅くなる。ちびちびと飲んでは少し減ったグラスに気分を良くしたナマガルシップスが酒を注いでくれた。これは明日二日酔いかもな。
サスは特にそういったことを気にするような様子もなくいつも通り飲んでいるようだ。こいつの二日酔いは想像ができないな。社会人なのだからそう言った管理もできるだろうからな。
「ナマガルさんは今回のアイマジどうですか?」
「聞くまでもありません。当然やりますよ。ゲームが面白いかどうかはやってみないとわかりませんが、楽曲も有名なクリエイターがたくさん集まっていますから心配はないでしょうね」
楽曲クリエイターも作品の出来に影響を受けるのだろうか、二人の会話を聞きながら聞きたくもなったが止めておいた。詳しくはないのだから口を挟んで空気を悪くはしたくない。
アイマジという作品自体に興味はあったが今まで触れようとしなかった。あそこまで長い歴史を持つ大きなコンテツとなると踏み入るにも勇気がいる。だが、今回は一緒に入ってくれる仲間がいる。今回はやってみようかな。
結局飲み会は二十三時でお開きとなり、俺もサスも泊めてもらうことになった。サスの家はここから歩いて三十分くらいかかるらしいが、ここの方が駅に近いということも利点もあるのだろう。
あとテンションが下がることのないナマガルシップスを抑えるためにも俺だけでは心許なかった。正直一緒に泊ってくれるのはありがたい。
翌日、六時三十分にアラアームで起きる。ちょっと飲みすぎたせいか少し頭が痛い。軽い二日酔いだな。コンビニで二日酔いに効く飲み物とか買ってくるか。
「あれ、フカジロウさんのアラームだったんですね。うわっ、俺はアラームかけ忘れてました。助かりましたよ。遅刻するところでしたよ」
「あっ、おはよう。これからコンビニ行こうとしてたんだけど一緒に行く?」
「あっ、おはようございます。行きます。朝ごはん食べて会社に行かないと」
隣で寝ていたサスは特にいつもと変わらない様子だ。俺の二日酔いの原因は何杯飲んだのか覚えていないこともあるのだろうが、違う種類の酒をちゃんぽんしたせいもあるのだろう。
家の鍵を持って行き、コンビニで朝食を買った後、戻って食べる。
「サスさんの始業は何時?」
「僕は八時三十分です。ご飯食べたらすぐ出ますよ。フカジロウさんは?」
「俺も同じだ。電車って朝混むの?」
「混むって言うレベルじゃないですね。この駅ならまだギリギリ電車内に乗れます。まあ、ぎゅうぎゅうで押しつぶされるレベルです。まず座れませんよ」
朝ごはんを食べながら二人で会話する。サスと二人きりで会話をするのは居酒屋で飲んだ時以来だ。あの時にああして二人で会っていなければこんな自然に会話できなかっただろう。
ここを出る前に家主に声をかけないといけないと思い、寝室の扉を開ける。家主は携帯で動画を見ていた。聞こえて来る内容から察するに昨日のアイマジのPVだろう。
「夢じゃないんですよね。本当にまあさがアイマジに出るんですよね?」
不安と嬉しさが両方混じった声が聞こえてくる。その声に「夢じゃないですよ」と答えると、家主は嬉しそうに笑った。
まあさの伝説はここから始まるのだろうな。
会社に行く電車はサスの言う通り混雑していて、降りるまでずっと押しつぶされていた。都内の通勤ってこんなにしんどいものだと改めて思えた。
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