アニメイベント④
うん、アニメの新情報が何か来るのかな、と思ったが特に何もなかったな。続編が来るほど人気がある作品でもないし、最近では余程の人気作でもない限りそういうことはないようだ。
花林と一緒に席を立ち、ナマガルシップスと合流する。その間に花林はイベントの感想を話し続け止まらなかった。
「さららからたくさんレスもらった」とか、
「CDの時よりも歌上手くなってたよね。さららは努力家だから、たくさん練習したんだろうな。あっ、他のみんなも上手くなってたよね。私、この間のリリースイベントいけなかったから余計にびっくりしりたよ」
とか、こちらは相槌を打つ程度しかできない程、言葉がマシンガンのように飛んできた。こっちはそこまで余裕がないというのに。
ナマガルシップス、サスの二人と合流する。そこからは近くのファミレスに入り、昼の部の感想大会が始まった。この間に晩御飯を食べたが、主に花林とサスが自分のしたい話をし続けるという時間だった。俺とナマガルシップスは聞き手側に回っていた。
「えっ、ベアリンさんって女性なんですか。メールでも全然女性とか書いてなかったんで普通に男性だと思っていました」
「あーたまに言われる。あんまりスカート履いてイベント来ないし、髪も面倒だから短くしてるんだよね」
サスはここに来るまで花林が女性という事を知らなかったようだ。髪も短いし基本的にパンツスタイルで体型もスレンダーだ。ネイルもしていないし、メイクも薄めだ。背が少し低い男性と思われても仕方ない見た目だと自分でも言っている。本人も特にそのことは気にしていないようだ。
花林曰く、高校までバレーボール部に入っていたから髪を短くしていたが、最近では美容院にかける時間、金が面倒だということだ。ネイルも同様の理由だ。スカートをはいているのを見たのも俺はこの一年で二回しか見ていない。あと、メールで女性だということを書かないのは性別で優遇されるのが嫌だという事らしい。
「というか、2ndシングルのリリースイベント行けなかったの本当に悔しいんだけど!みんなめっちゃ歌もダンスも上手くなってるじゃん!!あの場に居たかったー」
花林はよっぽど2ndシングルのリリースイベントに行けなかったのが悔しかったらしい。参加券の配布が先着で、しかも配布初日が平日だった。その初日に参加券が枯れるものだから平日に休みを取れなかった社会人や都内から遠い人間は参加ができなかったと聞いている。
都内で仕事している俺は午前だけ休んで参加券を取りに行ったし、フレックス制で在宅勤務のナマガルシップスも一緒に並んで参加券を確保した。そういえばサスもイベントには参加してたな。都内に住んでいるんだろうか。
「リリイベも良かったですが、今回の方がクオリティーは高かったですよ。リリイベの時はステージが狭くてダンスも少し抑えめでしたし、音響も今回の方が良かったですよ。それに関しては来週のライブが楽しみです。ベアリン氏も来週は参加されるんですよね?」
サスが話し出す前にナマガルシップスが口を開いた。やっぱり急な出来事への対応力が高いなこの人。
「そうそう。来週楽しみなんだよね。会場がお披露目イベントよりも大きいから大丈夫かなって心配してたけど、全然大丈夫そうだね。もう少しで完売って言ってたし、今度こそ満員の客席を見せられるんだね。あっ、ナマガルさん、ライブ終わったら飲まない?会場の近くはあんまり私達が行けそうな飲み屋がないから上野くらいで」
「いいですよ。あっ、フカジロウ氏は来ますよね?サス氏もどうですか?」
「えっ、僕も良いんですか!?ぜひお願いします。僕、全然オタク友達いないのでお供したいです」
サスは嬉しそうに返事した。もちろん俺もOKだ。来週の月曜は有給申請をしているので帰りが遅くなっても問題はない。上野なら一本で帰れるし居酒屋も多いはずだ。
晩御飯を食べ終わり、夜の部の開始時間も迫ってきたので会計をして会場へ向かう。前まではイベントとイベントの間の時間を使うのに悩んでいたが、今はこうして時間を潰す仲間がいる。本当にありがたいことだ。
夜の部の公演は昼の部と流れが一緒だった。アニメの振り返りトークは昼の部と違った質問、アフレコも違うシーンではあったが、ライブで歌う曲は変わらなかった。一応、両方来ても楽しむことができる構成ではあった。
ただ、嬉しい発表もあった。来週のイベントのチケットが完売したという発表がカナンからあった。今日の客の中で興味を持った人が購入したのかもしれない。
イベントが終わると四人で一旦集合した後、簡単に挨拶をして解散する。また来週、そう言って別れていった。ナマガルシップスとサスは同じ方向のようで同じ電車に乗って帰るようだった。俺と花林も同じ電車、別々の車両に乗って帰っていった。
また来週か。良い言葉だな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます