第23話:欲望に燃える伯爵の部下たち
光三郎は、飯ダンジョンの訪問者も徐々に増えて各施設にの改築増築を日々の仕事としてこなしていた。
そんなある日、飯ダンジョンの入口に現れたのは、ガストン伯爵の紋章を掲げた数名の武装した兵士たちだった。彼らの威圧的な態度は、訪問者やスタッフたちに緊張感を走らせた。
リリィが冷静な態度で出迎える。
「いらっしゃいませ。飯ダンジョンへようこそ――」
「案内は不要だ。我々はガストン伯爵の命を受け、このダンジョンに警告を伝えに来た。責任者に会わせろ」
リリィは少し困った顔をしながらも、すぐにいつもの笑顔を取り戻した。
「責任者ですね。少々お待ちくださいませ」
彼女はすぐにダンジョン核を通じて光三郎に報告する。
「ご主人様、ガストン伯爵の部下たちがいらっしゃっています。責任者とお話をしたいとのことです」
光三郎は少し考え込んでいると、アーヴィンが丁寧に一礼し言った。
「ご主人様、ここは私にお任せください。執事ではなく、あくまで『このダンジョンを代表する者』として対応いたします」
アーヴィンが堂々と部下たちの前に立つ。その姿は燕尾服をまといながらも威圧感に満ちており、兵士たちは思わず一歩引きそうになる。
「お待たせしました。私はこのダンジョンの管理を任されているアーヴィンと申します。ガストン伯爵様の部下の皆様、いかなるご用件でしょうか?」
部下たちのリーダーが一歩前に出て、高圧的な態度で告げる。
「このダンジョンはガストン伯爵様の領内に位置している。その収益を伯爵様に捧げるのが当然だろう。運営権を譲渡しろ、そうすればお前たちの活動を容認してやる」
アーヴィンは微笑みを浮かべたまま静かに答える。
「このダンジョンがある荒地は誰の支配下にも属していないはずです。したがって、譲渡というお話はお受けできません」
その冷静な対応に、リーダーの顔が引きつる。
「これは、伯爵様の意向だ!それがどれほどの意味を持つか、理解しているのか?」
アーヴィンは微笑みを崩さず、静かな威圧感を漂わせながら答えた。
「どうぞ、譲渡するつもりはないと伯爵様にお伝えください。このダンジョンの意思は変わりません」
続けてアーヴィンは騎士たちに提案した。
「せっかくいらしたのです。ここがどのような場所か、少し見ていかれるのはいかがでしょうか?」
リーダーは少し迷ったものの、興味を押さえきれず頷く。
「……いいだろう。伯爵様に報告するためにも見ておく必要がある」
アーヴィンは案内役として、彼らを温泉宿や商業エリア、リクリエーションエリアへと連れて行った。
広々とした温泉宿、訪問者で賑わう商業エリア、そして観客たちの歓声が響くリクリエーションエリア――部下たちはその規模と活気に完全に圧倒された。
「こんな施設、領内のどこにもない……」
「これだけの規模なら、相当な収益が見込めるだろう」
温泉宿の快適さや商業エリアの商品ラインナップ、ゴーレムバトルの盛り上がりに触れるうちに、彼らの視線には明らかな欲望が浮かび始めた。
見学を終えた後、部下たちは再びアーヴィンの前に戻った。リーダーが目を細めながら告げる。
「確かに素晴らしい施設だ。このまま放っておくには惜しい……伯爵様に報告させてもらう。そして、お前たちの意思がどうであれ、伯爵様の意向に従わなかった事を公後悔することになるだろう」
アーヴィンは微笑みながら、軽く一礼する。
「どうぞ、ご自由にご報告ください。しかし、いかなる事があろうとも、このダンジョンがその意思を曲げることはございません」
部下たちはその言葉に苛立ちながらも、ダンジョンを後にした。その背中には、伯爵の欲望がさらに膨らむことを予感させる雰囲気が漂っていた。
部下たちが去った後、アーヴィンは光三郎に報告を行った。
「彼らの反応を見る限り、伯爵様は強硬な手段を取る可能性が高いでしょう」
光三郎は険しい表情を浮かべながら頷いた。
「やっぱりそうか。次に何か仕掛けてくる前に、こっちも準備を整えておくべきだな」
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