レーヴィア高等魔導学校
レーヴィア高等魔導学校(旧レヴィアティアン魔法学校)が高名である理由は、第一に教員の顔ぶれ、そして第二に生徒の優秀さが挙げられるだろう。ある分野においては教員よりも生徒のほうが優れているということは珍しい事でもなんでもない。
四年に一度生徒を集め、最長九年間在籍することができる。四年に一度の一斉入学――狭き門である。
魔法関係職の社会的ステータスとして、レーヴィア高等魔導学校在籍、卒業という肩書は、道中として最高位のシンボルだろう。高くそびえる白を基調とした豪奢な建物を見上げる度、ここで学べることに感謝するものだ。
だがまあ、ここで得られる『学ぶ』という行為に、あまり価値を見出していない馬鹿者共も、実は大勢いる……。
故にいつもの朝の教室といえば閑散としたものだけれど、今日に限っては、学年で割り当てられた教室に、程々の人けを感じた。
「おはよう、
席に着き、前の席で小説を読んでいた生徒に声をかける。
彼はゆっくりと振り向くと、色気の良い笑顔を浮かべた。
「おはよう、シキ」
色気の良い笑顔とは男に使うに奇妙とも思われる言葉だが、彼はまさに男でありながら
雪国生まれ特有の肌の白さが特徴的で、青みがかった黒の髪を、うしろでちょこんと結っているのがとても似合っている。彼の傍らには……見るからに異質と分かる、禍々しい直刃の刀が、壁に立てかけられていた。
彼の名は、
妖刀【峰打ち】に呪われた子。呪いを受け入れた子。
後述する共通の友人である、大馬鹿者の親友。
「今日は……何もないけれど、たまたま皆集まったみたい」
「集まったって言い方も妙だけれどな。
「今日は来ない。【Double】のお仕事だって」
「……まったく」
今のがその大馬鹿者のあだ名だ。
ひとしきり、雪灘と近状を話し合った。――ここのところは、少なくとも大局を見れば、ここら一帯は平和が続いているようだ。
しばらく教室は静かなものだった。まあ、この学校が賑やかになるのは、いつもこれからのことだけれど。
「おはよーうっ!」
まさに、賑やかさの起爆剤が、元気な声を上げながらやってきた。
蜜凪は昨日の沈鬱さなど消えたとばかりに、元気爆発な笑顔を表情に、ドヤドヤと一人音立てながら教室に入ってきた。
「おはよう、レミ」「……おはよ」「うーす」
「おはようおはよう。――なんか今日、人多いな?」
「うん。ユキもミドリもいる」
「へえ、平和でなにより。……あれ? リフは?」
「まだ来てない。ユキに聞いてみたら?」
「ユキー、リフ知らない?」
「お仕事。【Double】の呼出しだよ」
「ほーん、ありがと! ……相も変わらず、大変そうだねぇ」
「ね」
まるで今から今日が始まったように、教室内の温度が循環し始めた。
「あっ、
「ん、どれどれ……? ――っって、うぉおっっ……」
「キッショッッ!! いや、これ……キッショオッッ!」
「なんだァ!? オイこらぁ、
「いやこれギャグ狙ってるでしょ」
「大将、こりゃナイよ」
「全員表出ろ」
「おはようございますッ! 私が、登校しました!!」
「おはよ!」「おはよう、レイナ」
「聞こえませんでした? 私が、登校しました。もっと
「そうだね」
「今日は快晴! 蜜凪、愛架、これから私たち三人で散策に出かけましょう、そういう日和ですから!」
「これから学校が始まるよ」
「全員席着けー。って今日、人多いな。――成志郎、全員の出席確認頼む」
「なんで俺だよ」
これが俺たちの学校の日常。
例え人が少なくても騒がしい朝。
「えー、
「やだよ暴力飛んでくるもんー」
「起きろ、学業の時間だ」
「殺すぞ」
「レミ、そのクマちゃん貸せ。――起きろミドリコ」
「殺――キッショッッ!!」
「ハァン!?」
「全員起きろ、返事がなかったら出欠バツ付けるぞ!」
「「「ハーイ」」」
「――俺なにやってんだろうな……」
まあこんなもんだろうなって学校風景だと思う。ここしか知らんから特殊かどうかは分からん。
一番騒がしいのはこのタイミングだな。
そんなこんなで、レーヴィア高等魔導学校の一日が始まる。
フェアリータップと欠落の魔法使い ~迷い妖精と迷う人間と、創られた聖女と魔王の剣~ 一理 @itiri-yuiami
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