ノマドホームワーク
黒猫侍
プロローグ
俺は神戸市の山側にある一軒家を拠点兼住処(すみか)として気の向きのままな生活を一人送っている。この住処は長らく親戚が民泊として利用していたのだが利用客がほとんどいなくなった為、俺が権利を格安で購入し所有している。自宅というよりもアジトと言ったイメージで住んでいる。この歳でマイホームと言えば驚かれるが地方であり築年数もそこそこ年期が入っている。何よりも近隣は高齢化が進んでいて若い世代がほとんどいない。譲り受けるには非常にお手頃価格な物件だ。
これはそんなしがない25歳の自由人の日常である。
俺はフリーランスのエンジニアをしている。この仕事に就いた理由は日々の業務はノートパソコンとWi-Fi環境さえあれば問題ない。
究極のノマドワーカーだ。
拠点(自宅)周辺は20時にもなれば目の前の道路を歩いている人は皆無で時折片側1車線の道路から車が走り去る音が虚しく響く程度だった。
俺はこの環境を心地良く思っている。
昼間でも人通りが非常にないが治安は悪くはない。最大の利点として五年程前から拠点(自宅)から徒歩1分以内にはコンビニが出来ている。
俺自身の生きがいの一つとして真夜中の閑散とした雰囲気の中コンビニに足繁く通い夜食を買って自宅で食べながら動画配信サイトのお気に入りの配信者の更新動画を楽しむのが生きがいだった。
拠点(自宅)に人が来ることはなかった。
仕事の依頼や打ち合わせは基本リモートだしたまに企業イベントのエンジニアスタッフとして会場に遠征する程度の仕事なんで拠点兼住処について詳しく知る人はほとんどいない。
俺自身が秘密主義者なんで誰にも教えていないからというのもあるんだが、知ったところで誰もここまで好き好んでこようと思うとは思えない。
拠点(自宅)から徒歩3分の場所にさびれた田舎駅がある。その駅から直結したスロープ階段を緩やかにとぼとぼ歩いていくと大規模な運動公園に出る。公園の側には海が広がっている。公園を中心に左右に長いウォーキングロードが続いている。左に行くと三ノ宮方面に右に行くと明石方面に続いている。あくまでも歩いていくのは現実的な距離ではない。
又、俺が相続した拠点(自宅)である一軒家を出て目の前の道路を左に直進すると下り坂になっており15分程歩いていくと商店街やショッピングモールがあった。周辺を歩くとそこそこ有名な駅前に行き着く。ここは社会人や学生等地域住人だけでなく他所からきた観光客で賑わう都会のストリートタウンに準じた、たたずまいの街だ。
俺の拠点(自宅)は2階建4LDKと一人で使うには贅沢すぎて持て余している。
基本1階の畳のある2部屋をエンジニア業務の作業部屋として利用している。キッチンダイニングは扉を開けて玄関の正面にある。4人掛けのテーブルを中心に冷蔵庫と台所がある。
玄関扉右側にはお風呂場と個室トイレがあり左側に作業部屋がある。作業部屋といっても一般的な民家と変わらずTVなどがあるぐらい。仕事に必要なのは卓上テーブルと長時間座っていても快適な座椅子とノートPCそしてWi-Fi通信環境のみだ。
2階の部屋はほったらかしかと言えばそうではない。自己満足の空間(イベントスペース)として活用している。この空間に関しては後日語ることにしよう。
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