存在がときめき

トキメキの父はキズナという馬だ。日本ダービーという、日本の競馬界で1番「名声」があると言われるレースなどを勝ったスターホース。その父ディープインパクト、祖父はサンデーサイレンスである。


この祖父、サンデーサイレンスという馬が日本競馬に与えた影響は、計り知れないと言われている。アメリカ競馬で走った一流馬で、その類まれなるスピードの遺伝を期待されての輸入であったはず。だが、その期待なんぞは「とう」に超え、今や神的存在になっていると断言して良いと思う。


サンデーサイレンスのクロス(前述したインブリードの話)を、いかに濃くしないで強い馬を作るかというのも、昨今の日本競馬の生産界において大切な要素の1つだ。だが本来、強い馬のクロスは狙うべきなのだと、元来定義されてきた歴史が競馬にはある。それが「クロスをあえて避ける考え」をしなければいけない程に、日本のサラブレッド界は、サンデーサイレンスの血を持った馬で溢れかえっている事からも、その偉大さは計り知れないといえる。


また、競馬の面白さの1つの要素として「世代や時代」を超えた血のドラマがある。それは大雑把かつ感覚的な表現になるが、いわゆる「ロマン」といわれるものの1つである。


サンデーサイレンスの産駒(子供)達が一斉を風靡していたのは1990年代後半から2010年頃までだが、モンロークォーツは現役時代のレースで、その子供達としのぎを削っていた。


ライバルとして走っていた馬達の偉大な父であるサンデーサイレンス。その孫であるキズナの子供を、彼女は生涯最期の子として宿し、誕生したのがトキメキなのだ。何かドラマチック精神のようなものが、心の中で騒がしい。


名前に深い意味は無いのだと、牧場の人は言う。存在自体が「ときめき」なのだと。とても分かる気がするし、このフワフワした感じがとても好きで、トキメキが小さい頃から、私は彼の大ファンだった。


たくさんの愛と希望を背負ったトキメキはこの3年間、私を救い続けてくれた。今は少し遠い存在の様に感じるけれど。生まれた時から、彼は優しく強い「特別」な男の子であった。

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