5

 わたしはぴたりと足を止める。



 は、話しかけられた!?


 しかも、“拾ってくれないの? 桃瀬さん”って…。



 振り返るわたし。


「な、なんで苗字!?」


「え、同じクラスだし」



 た、確かに…。



「ひ、拾ってって、どこか怪我でも?」


「ううん、ただの家出」


「はぁ、家出」



 …え、家出!?



「い、家出はダメです。早く帰った方が…」


「帰っても一人だから」


「え」


「両親、ずっと仕事で帰って来ないし」



 梓沢くん、高校ではいつもみんなに囲まれてて憧れの存在なのに、家ではいつもぼっちなんだ…。


 ぼっちは寂しいよね…。



「…いいよ」


「え?」


 梓沢くんが聞き返す。


「きょ、今日だけなら」



 い、言ってしまった…。



「ほんと?」


「う、うん」


「ありがと」



 え、笑顔が眩しい…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る