チートはズルくて卑怯? バカ野郎、だから使うのが楽しいんだろう!!! ゲームのやり過ぎで死んだ大学生のセカンドライフ
Gai
第1話 なんともアホな死に方
「……どこだ、ここは?」
青年……黒瀬(くろせ)雄(ゆう)吾(ご)は周囲を見渡し、自分の現状が理解出来なかった。
(前も後ろも……右も左も、上も下も白い……な、なんだここは????)
少し前まで、自分は自室でゲームをしていた。
それは覚えているが、何故全て真っ白な空間にいるのか分らない。
「気が付いたみたいだね」
「っ!? だ、誰……だ」
耳に入った声の方向に顔を向けると、そこには一人の男が立っていた。
(いや、マジで誰なんだ? つか、不法侵入……いや、ここは俺の部屋じゃないん、だよな??)
雄吾の目の前で立っている男性は髪の色がとてもカラフルで、高身長に筋肉質……そして、どう考えてもコスプレ以外では着ないであろう、派手な服を着ている。
(ぱ、パリピな人種か?)
雄吾はスーパーコミュ障な陰キャという訳ではないが、初対面のパリピに対してあまり上手く喋れる自信がない。
「俺は娯楽の神、ベスさ」
「ご、娯楽の神?」
「そう、娯楽の神。良い感じに遊んでる雰囲気があるっしょ」
「そ、それは……そうかも」
ただチャラチャラと派手に遊んでいる類の雰囲気ではなく、どんな物事に対しても適度に楽しむことが出来る……的なオーラが体から漏れていると雄吾は感じ取った。
しかし……そんなことよりもまず、何故自身を娯楽の神と名乗る人物が目の前にいるのか……それが最大の疑問だった。
「おっと、まずこれを君に……雄吾君に伝えないといけないな。君はね、死んだんだよ」
「……は?」
頭の中に一割ほど、もしかしたらそうなのか……といった予感はあった。
だが、いざ自分の現状を……死んだのだと伝えられても、そう簡単に納得出来るものではない。
(俺……死んだのか? でも、さっきまでゲームしてたよな)
大学生で一人暮らしをしていた雄吾は、一人暮らしである利点を最大限に利用し、思いっきりゲームを楽しんでいた。
「なんで死んだのかというと……まっ、ゲームのやりすぎだね。五日間ぐらいぶっ通しでゲームしてたでしょ」
「五日間って、そんなには……いや、してたか?」
現在、時期的には夏休み。
サークルには入っていたが、特に強制参加ではないので、買ってプレイせずに溜めていたゲームを遊び尽くしていた。
「それぐらいぶっ通しで楽しんでたんだよ。でもさ、君は俺たちみたいな神じゃなくて、普通の人間。五日間もぶっ通しでゲームしてたら、そりゃ死んじゃうよ。ちゃんとご飯を食べてなかったし」
「うっ……そ、そういえば食ってなかったような」
五日間を振り返ってみれば、どれだけ自分が不健康な生活をしていたのか一目瞭然。
そりゃ死ぬはと思ってしまう。
(さすがに五日間ぶっ通しでゲームし続けたのはヤバかったか……せめて飯ぐらいはちゃんと食べてりゃ良かったな)
目の前の男……ベスの言葉を完全に信用するわけではないが、十分に死因があると思えた。
「……因みに、今から生き返れたりするの」
「無理だね。まだ魂は消えずに俺が留めてるけど、肉体の方は完全にお陀仏状態。強引に戻しても、直ぐにこっちに帰ってくるだけだよ」
「そう、ですか」
我ながら馬鹿な死因で死んでしまったとは思う。
現実を生きることに絶望しているタイプの人間ではないので、現世には十分に未練があり、雄吾は思わずその場に膝から崩れ落ちた。
「まぁ、そう落ち込むなって。俺が手頃な世界に転移か転生させてあげるからさ」
「…………え、マジっすか?」
「うん、マジでマジで」
「あの、異世界系のラノベみたいな感じに?」
「そうそう、そんな感じに」
漫画もライトノベルもかなり読むので、勿論異世界系のラノベがどういった内容なのかも知っている。
そして……一度ぐらいは、もし自分がそんな世界に転生……転移したらと考えたことがあった。
「それは……凄く嬉しいけど、何故俺なんだ?」
「何故と言われても……ゲームのやりすぎで死んだ人間なんて、物凄く面白いじゃん」
「いや、まぁ……そうかもしれないけど」
死んでしまった本人としては、面白いというよりも間抜けな死に方。
だが、娯楽の神であるベスとしては、娯楽を続け過ぎて死んだ黒瀬雄吾という人間は非常に面白いと感じた。
「安心するといい。君には、しっかりとチートを上げるよ。君も好きだろ、チート」
「っ……そうだな」
ベスが何を指しているのか、雄吾は直ぐに理解し……苦笑いを浮かべた。
「別に悪いと思う必要はない。君はそれだけを楽しんでいた訳ではないからね。それじゃ、第二の人生を楽しんでくれ」
「えっ、ちょま」
まだ自分はこれから異世界に転生するのか、それとも転移するのか。
そして、いったいどんなチートを貰えるのか……全く聞かされてない。
「十年後ぐらいになったら、彼の様子を見ようかな」
一仕事を終えてスッキリした……そんな表情を浮かべる娯楽の神、ベスは遊び仲間の元へと向かった。
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