有象無象の人
千織
第1話 物を書く人
彼女を眺めて問いかける。
彼女は私を見ていない。
悲しみに暮れる、自分しか見ていない。
私のために説明などしない。
私は彼女を観察する。
彼女の目線、彼女の表情。
そんな面倒なことをしてでも書かねばならないと思うのは、
私に語ってくれた人たちの、
人生が彼女の中にあるからだ。
自分が傷ついていることにも気づかず、
自分が我慢していることにも気づかず、
自分が限界を超えていることにも気づかず、
自分の気持ちすらわからなくなってしまった人たち。
ぼんやりと、私の解釈など入れてはならぬ。
せめて彼女の真実を。
彼女たちが生きた証を残すのだよ。
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