第37話 謹慎明け
「ねぇアファエル、いつ謹慎がとけそうですか?」
ワンルームのアパートで、アファエルにメッセを送るわたし。
『えっと。今日、連絡があって明日には出るよ』
アファエルから、返信が来る。
「うん。楽しみ」
ようやく、授業に出れるんだね。
『だな』
『休んでいる時って、なにかあったかな?』
アファエルが、学校の様子を聞く。
「それがさ」
「まぁ、色々あったけど、明日のお楽しみってことで」
ちょっとした、サプライズよね。クラスの人数が増えてるって。
『なんだよ。もったい付けてないで言えよ』
「待ってるから、ちゃんと来てよ」
『あー、わかってる』
次の日
「おはよーアファエル」
電車で、アファエルと再会する。
「おう」
照れくさそうなアファエル。
「ちゃんと来てくれたわね」
正直、ちょっと心配だった。
「まぁな」
頭を掻くアファエル。
「うれしいわ」
朝っぱらから、笑顔になっちゃうわ。
「そんな、よろこぶ事かよ」
「ううん。うれしい」
「フッ」
アファエルも、ニヤリと笑う。
「そういえばこの前、プリムちゃんがいなかったけど、元気にしてるかな?」
少し、引っかかりがあってね。
「プリムか………」
表情が曇るアファエル。
「どうしたの?」
なにか、良くないことかな。
「最近、あいつ元気無いからさ」
「えっ、なんで?」
「それがさぁ。理由を聞いても全然答えてくれなくてさ。あんまり聞きすぎて、出て行くって言われても、ちょっと心配って言うかなんと言うか」
苦悩を吐露するアファエル。
「へぇ。出て行って欲しいのかと思ってた」
そう、わたしがイジワルで言うと、
「そりゃあ、オレの母親が帰って来たら、そっちに行って欲しいよ」
これが、アファエルの本音かなぁ。
「まだ、日本に帰って来ないんだね」
なにしているか、聞きそびれちゃったわ。
「そうそう」
「いつ頃かって、わかってるの?」
「いや、わからない。たまにしか連絡取ってない」
あまり、話してないんだね。
「そうなんだね」
「だからさ、それまでは面倒を見ないといけないからさ」
困ったように笑うアファエル。
「アファエルってさ」
「えっ?」
「けっこう、面倒見が良いところあるじゃん」
一応、ほめ言葉でね。
「そうかな」
首を、かしげるアファエル。
「うん。クラスのみんなに、機体の乗り方を教えたりさ」
「あー、まぁ脱落者を出したくは無いから」
つらい思いを、させたく無いアファエル。
「うん。そんなこと、普通は出来るもんじゃないからさ」
同じ生徒とはいえ、ライバル関係だし。
「そうそう!」
話に、入って来るレクラちゃん。
「わっ」
ビックリするアファエル。
「まぁ良く言えば、みんなにやさしい。悪く言えば八方美人?」
ズバリと言うレクラちゃん。
「誰が、八方美人だよ」
少し、怒るアファエル。
「ごめんね、怒った?」
手を合わして、あやまるレクラちゃん。
「いや、怒ってねぇし」
ムキになるアファエル。
「やっぱ、怒ってるでしょ」
苦笑いするレクラちゃん。
「こんなんで、いちいち怒っていたら、レースなんて、やってらんないよ」
首を振るアファエル。
「まぁ、それもそっか。ウフフ」
ニッコリと笑うレクラちゃん。
「レクラちゃん。ちょっと」
わたしが、レクラちゃんの手を引っ張る。
「なにかしら、フウカさん」
満面の笑みのレクラちゃん。
「違ったら、ゴメンだけど。レクラちゃんってアファエル狙ってない?」
ストレートに聞いてみるわたし。
「さあー、どうでしょう」
意地悪そうに、誤魔化すレクラちゃん。
「ハァッ!? この前と、違ってるじゃん」
確信犯ね。
「そうだったかしら」
シラを切るレクラちゃん。
「むぅ」
だいぶ、イラッときちゃいました。
「冗談よ、そんなんじゃ───」
と、言いかけるレクラちゃんに、
「いや、だって。アファエルの住んでるマンションを見た時から、態度がおかしいもん」
証拠を、つきつけるわたし。
「アハッ、気のせいよ。気のせい」
両手を振って否定するレクラちゃん。
「ふぅーん。どうだか」
腕組みするわたし。
「もう少しで、辻堂ね」
車窓から、外の景色を見るレクラちゃん。
「あーっ、あからさまに話をそらした!」
確実に、やってるわ。
「まぁ、クラスメイト同士、仲良くしましょ」
苦笑いするレクラちゃん。
「ええ、そうよね」
しぶしぶ、納得するわたし。
「わーい、賛成」
レミアちゃんが、湧いて出る。
「レミアちゃんまで」
わたしって、こんなにライバルがぁ。
「あったしも、いるっしょ」
ミキハちゃんも、頭を突っ込んでくる。
「ミキハちゃんは、少し違うからイイとして」
「なーんでよ。あったしが16だから?」
地団駄を踏むミキハちゃん。
「そうそう。どう考えても」
『辻堂。辻堂です。お───』
アナウンスが流れる。
「おっ、着いたから降りよう」
アファエルが、人混みをかき分ける。
「わっ」
転びそうになるわたし。
「おい、さわ」
さわちゃんを、起こすアファエル。
「んッ」
駅に着いて、教室に入るアファエル。
「おい。なんだこいつら」
男どもが、増えていることに戦慄が走るアファエル。
「チッス、せ・ん・ぱ・い」
モヒカン男が、挨拶する。
「これって、まさか」
「アファエルは、知ってたっけ? あっちで負けた生徒が、こっち来るって」
まぁ、知ってるかな。
「いや、オレは特進クラスで、こんなことになるって、記憶から消えてた」
席に座って、頭を抱えるアファエル。
「ちょっと先輩。そりゃないっすよ」
モヒカン頭が、煽る。
「それに、トーナメントで勝ち残って、それどころじゃ」
苦笑いするアファエル。
「自慢っすかそれ」
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