第26話 頼み
「ちょっとイイかな、アファエル」
放送から3日ほどたったある日。
珍しく、ミキハちゃんが、アファエルに話しかける。
そのまま、教室の端まで行く二人。
「おう、どうした」
秘密の話かと、固くなるアファエル。
「聞いて欲しいことがあって」
いつも、頭の良さを鼻にかけたようなミキハちゃんが、妙にしおらしい。
「うん。まぁ、元バイト仲間として、お願いを聞いてやらんこともない。出来る範囲内でな」
ニコッと、引きつった笑顔を見せるアファエル。
「うん、助かるよ」
うれしそうに笑うミキハちゃん。
藁にもすがる思いだ。
「で、なんだよ頼み?」
「今度の土曜って、空いてるかな?」
アファエルのスケジュールを確認するミキハちゃんだが、
「えっ、それってデート───」
アファエルは、ドキッとする。
「違う。空いてない?」
「なんだ、ホッとした」
安心した表情になるアファエル。
「えっ、あったしは眼中にないと? ショックかも」
のけぞるミキハちゃん。
「おいおい、眼中に無いのはミキハの方だろ。今度の土曜日は、バイト休みだが」
アファエルのことなんて、意識していないと、かつて言っていたミキハちゃん。
「てへっ」
型にはまったような、舌を出すミキハちゃん。
「もうイイや」
話に、ならないと立ち去ろうとするアファエル。
「いや、待って」
アファエルの手を引っ張るミキハちゃん。
「なんだよ。はっきり言え」
「バイトのシフトに、穴が空いちゃって、3時間だけお願い出来ないかな?」
手を合わせるミキハちゃん。
「なんだ、大変そうだな」
なぜ、ミキハちゃんからと、若干引っ掛かりを感じるアファエル。
「お願いー」
ウインクするミキハちゃん。
「まぁ、そこまでお願いされて、断るわけにはいかないよな」
折れるアファエル。
「わーッ、ありがとうアファエル」
その頃
1『かわいいかわいい光希ちゃんをhshsするスレです
前回のが消えたから、立てなおしまっする
詳細は>>2』
一度、消されたのに、懲りずに立てる男。
2『>>1
つうほしマスタ』
他人に2ゲットされるスレ主。
3『>>2
おい、お前だ
返せ』
4『良スレのイヨカン』
12『このスレは伸びる(確信)』
と、順調にコメントが書き込まれる。
15『けしからん。もっとやれ』
19『>>15
この人です』
21『まじめに、かわいかったな
アイドルでも目指せば良いのに
だが>>1よ自重しる』
などと、時折マジレスも入る。
23『>>21
わかってます
くれぐれも、変なことはしません(キリッ』
どうやら、1は止められそうにない。
26『>>23
どうせ凸りに行くんだろ
行くなよ。絶対に行くなよ、』
などと、往年のギャグも飛び出し、
32『>>26
それ、行かせようとしてますやん定期』
41『>>1が行くなら、彼女は俺が守る』
欲望を隠しつつ、欲望に正直なヤツがあらわれ、
44『>>41卑怯だぞ』
45『>>41半年ロムってろこのタコ』
47『>>41の人気の高さに』
短時間で、どんどんコメントが伸びる。
53『>>47
人気なのは>>1だろ
違った、光希ちゃんだ』
土曜日
「なんか、すっごいお客さんの数だな」
コンビニにアファエルが行くと、男子校のヤツらで、むさ苦しいほどになっている。
「ミキハちゃん、アイドルになってよ。オレ推すからさ」
男子生徒が、ミキハちゃんの周囲を固める。
「えー」
困った顔をしているが、まんざらでもないミキハちゃん。
「そうそう! ミキハちゃんは、推しのアイドルとかいないの?」
との質問に対しては、
「うーん。ティッティ推しでーす」
と、正直に答えるミキハちゃん。
「おおっ。こんなマイナーな名前が出るなんて、ガチなんですね!」
ミキハちゃんを、解析する生徒。
「あっ、うん」
質問攻めに、困るミキハちゃん。
「キミなら、ティッティどころか、あの松田ミリハちゃんも越えるアイドルになるよ」
いよいよ、ソロ活動を始める大人気アイドル。
「あー、ちょっとうれしいかもー」
それは、素直にうれしいミキハちゃん。
「スゴい人気だな」
レジカウンターから、傍観するアファエル。
「ちょっと、アファエル。こっち来て」
アファエルの手を引いて、バックヤードに入るミキハちゃん。
「よかったじゃん。熱烈なファンが付いて」
半笑いのアファエル。
「よく! ないわよ! 棚出しの邪魔になるからって、店長おかんむりよ」
アファエルの手を、無茶苦茶にしゃくるミキハちゃん。
「それなら、帰るように言えば?」
薄ら笑いをうかべるアファエル。
「言ってるわよ。でも、すぐ戻って来るの」
ひどい時には、10分で舞い戻る。
「いやー、熱心だねぇ」
感心するアファエル。
「頼みがあります」
顔を、アファエルの顔に寄せるミキハちゃん。
「あれ、3時間って」
「あれはウソ」
バイトを口実に、アファエルを呼び出した狡猾なミキハちゃん。
「えっ?」
固まるアファエル。
「彼氏のフリして! お願い!」
本当の要求をするミキハちゃん。
「え゛っ。マジか」
正直ダルいアファエル。
「ジャーン! あったしから、重大発表がありまーす」
アファエルの手を引いて、再び店内に出る。
「なになになーに?」
一挙手一投足を見ている男子校の生徒たち。
「この人と、結婚を前提としたお付き合いをしていまーすパチパチー」
アファエルの左腕に、からみ付くミキハちゃん。
「………えーーーーー」
一瞬の沈黙の後、阿鼻叫喚の断末魔が店内いや、地域一帯に響きわたる。
「するってーと、夜の方も?」
さらに、つっこむ生徒。
「ご想像に、おまかせしまーす」
満面の笑みを見せるミキハちゃん。
「ピキ」
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