第61話 輝き朝、謎の事件 ②

MVの放送が終わり、画面はスタジオへと戻る。 司会者の前には、エアリアルズの5人が仲良くひとつの三人掛けソファに並んで座り、インタビューが始まった。


「新生フェアリーズグループ、エアーリアルズの皆さん、ようこそ!」


「はじめまして! わ・た・し・た・ち、エアーリアルズです! よろしくお願いします!」


5人の声が揃うが、音のトーンや話し方には個性が表れていた。クールなクローディア、知的で落ち着いた声の栞成。対して、実瀬と他の二人は明るく高い声。全体としては、美しく調和したハーモニーのような挨拶だった。


「フェアリーズプロダクションは、アヴァロンの世界からやってきた妖精たちをテーマに、各ユニットが異なるコンセプトを持っています。 これまでに登場したのは、『森姫のヴァルトヴァイプフェンズ』、『大地精霊のエルトヴァィズ』、『海娘のセイレーンズ』、『電気幽霊ゴーストのグレムリンズ』、『家の福娘アイトバラズ』。 そして今回、第六班は『そら』。それが、皆さんのエアーリアルズです。 この名前には、どのような思いが込められているのでしょうか?」


実瀬が手を挙げて答える。


「はい! フェアリーズは“幸せを届ける”使命を持っています。私たちエアーリアルは、天女として、空から皆さんを見守りながら、テーマソングの『明日へもたらす風』のように、勇気と希望を届けたいと思っています。これからも、ずっと皆さんのそばにいます!」


「立派な決意ですね。まさにフェアリーズの精神が受け継がれています。さて、フェアリーズの皆さんは本名とは別に『』を持っていることで知られています。 ここからは、それぞれのネームでお尋ねしていきますね。」


「はい!」


5人が揃って頷いた。


「まずは、グリーナさん。幼少期から芸能界で活躍されてきたあなたにとって、フェアリーズとしての今の気持ちは?」


柚奈、は軽く前に出て、涼やかな笑みを浮かべる。


「芸能界の空は広く、高い。私はもっと多くの可能性を磨いていきたいです。 母上様や父上様、そしてフェアリーズの先輩方に恥じぬよう、精一杯頑張ります。」


その話し方は、まるで本物の貴族令嬢のように丁寧で上品だった。


「志が高いですね。続いて、ヴィリーさん。あなたは作曲が趣味だとか?」


栞成は落ち着いた様子で答える。


「私は音楽を作ることが好きです。自分のアビリティで誰かの心に届くような曲を作っていきたいです。」


「素晴らしい! フェアリーズにクリエイターが加わることで、新たな魅力が広がりますね。」


「はい。才能を、磨き続けていきます。」


「次は、ツェパソニアさん。あなたはモデルやストリートダンスでも活躍されてきました。アイドルになった理由は?」


クローディアは短く答える。


「もっと広く、高いステージに立ちたかったです。」


「なるほど。パフォーマンスの真髄を求めているのですね。どう表現していきたいですか?」


「すべてで。私の見せる全てが答えです。」


無造作に整えた髪、隠しきれない情熱、自然と纏うオーラが、言葉以上に彼女を物語っていた。


「では、ルサーリさん。今の気持ちを一言お願いします。」


天木小依は肩をすぼめ、顔を赤くしながらも、勇気を出して口を開いた。


「あの……芝居に、興味があります。が、頑張ります……はいっ。」


「なんて可憐なフェアリーなんでしょう!あなたの演技を楽しみですよ。」


「はい、努力します!」


「そして最後は、クイーン−−イレアナさん。チームリーダーとして、一言お願いします。」


実瀬は、一拍置いてから微笑んだ。どこにでもいる普通の女子高生が見せるような、照れくさそうな笑顔だった。


「はい。えっと……私は、自分が『クイーン』と呼ばれるほどの存在じゃないと思っています。 誰がリーダーか、決めたくないという気持ちもあります。プロデューサーさんもおっしゃっていましたが、私たちは仲間であり、同時にライバル。でもひとつだけ言えるのは、このチームのみんなは本当にすごくて、才能にあふれていて。そんな皆と一緒に進んでいきたいって、心から思っています。」


その等身大の言葉に、司会者も自然と頬を緩めた。


「素敵な気持ちですね。ですが、あなたはずっとWebチャンネルで発信を続けてきて、あなたの歌声に魅了されたファンも多いんですよ。これからもその歌の力で、みんなを引っ張っていってくださいね。」


少し驚いた表情を見せながらも、実瀬は笑顔で頷いた。


「そんな、恐縮です……でも、皆さんの期待に応えられるよう、これからも頑張っていきます! エアリアルズの応援、よろしくお願いします!」


「以上、エアリアルズのインタビューでした。今後の活躍にも注目していきましょう!」

画面が切り替わる。


MVもインタビューも終わったあと、陽太は口を開けたまま、画面を見つめていた。


「……赤星さん、なんか……カッコいいね!」


「もっとちゃんと評価してあげなよ。」


陽菜の突っ込みに、陽太は照れくさそうに笑いながら肩をすくめた。


「いや……もう僕が評価できるレベルじゃないし。彼女はプロだよ。」


「お兄ちゃん、しっかりして。今のままだと、ただのファンだよ?」


「うん、そう言われてもね……。僕なんて、ただの普通の高校生だし。」


「でも、お兄ちゃんにはすごい力があるじゃん。みんなを守るために、スーパーヒーローになってよ。」


「うん、そのつもりで頑張ってるよ。でも……赤星さんたちって、本当に人に勇気を与える存在って感じがするよね。」


彼女たちの輝きに感心しながらも、陽太の胸には、まだ迷いがあった。

自分の力は覚醒したばかりで、使いこなすにも不安がある。

ヒーローに憧れる気持ちは確かにあるけれど、その頂はまだ遥かに遠くて、果たして自分がそこに辿り着ける日が来るのか、それすらも分からなかった。


「もう、彼女たちの話はいいから。早く食べて。冷めるわよ。」


黛璃が豚汁の入った椀を三つ、テーブルに置きながら言った。


「「はーい!」」


陽太も陽菜も、声を揃えて返事をし、手伝うように動き始めた。

陽太はふと、片付いた辰昭の席を見て尋ねる。


「母さん、今日も父さんはまた出張?」


「ええ。福岡の代理店で、部長が退職したから手伝いに行っているの。」


「これでもう、4度目の出張だよ」


「パパも大変だよねー」


「毎回の移動、大変そう……」



三人が会話を交わしながら食事を進める中、テレビから流れるニュースに黛璃の表情が曇った。


それに気づいた陽太が声をかける。


「母さん、どうかしたの?」


「ニュースよ。見てごらん。」


陽菜の提案に陽太は顔を見合わせ、さらに画面を見つめる。


『昨晩、日野市で高校生の男女3名が何者かに襲われ、死亡しました。傷痕の状況から人為的な犯行ではない可能性が高く、現在も調査が続いています。 この2週間で、同様の被害は8件目。野生動物による襲撃の可能性もあることから、UCBDクーリーバ隊は深夜の単独行動を避けるよう、市民に注意を呼びかけています』


「場所が近いよね……」


黛璃は小さく震えるような声でつぶやいた。


報道内容を見ても、陽太はあまり怯えた様子を見せず、ぼそりと漏らす。


「2週間で8件、これはもう17人目……でも、まだ犯人の手がかりすら出てないのか?」


「でも大丈夫だよ。お兄ちゃんがいるから、家は安全でしょ。」


陽菜の言葉に、陽太は自分の力がどれだけ通用するか分からないという思いを抱えながら、少し戸惑った顔で言う。


「……いや、それより早く解決してくれる人がいるといいな?」


朝食を終えると、陽太と陽菜は連れ立って、学校へと向かった。

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