第11話

私から興味を逸らすことなく会話を続ける高瀬くんに、本格的に面倒だ、と一気に警戒心のレバーがマックスまで引き上げられる。



さっきから女子の視線がちらちらと彼に集まっているのは、きっと気のせいじゃない。


そのどれからも感じるのは、熱っぽい空気の色。


そんな彼と話をしている私が、彼女たちにどう映るのか気が気ではなかった。



勘弁してほしい。


彼女たちのそれを、彼は自覚しているのだろうか。



(……あい子、)



いまだにおしゃべりを続けるあい子に、困った私は心の中で助けを求める。


それが通じたのかどうか、ちょうど終わったようでバッグに荷物を纏めて私を振り返る。



「さくら、帰ろっか?」



そんなあい子に頷いて、安心して帰ろうとした、のだが。



「ばいばい、小峰さん」



背後から聞こえた声に恐る恐る顔を向けると、机に突いた右手で頬を支えながら、かわいく左手を振る高瀬くん。


私はそれに曖昧な笑みを貼りつけた顔で、軽く会釈して教室を出たのだった。

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