第一章

uneasiness

第3話

『新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます』






―――4月…



新しい制服に、新しい生活。


目の前に広がる昨日までとは違う景色に期待に胸を膨らませる、そんな季節。




それは、ただ日々を流されるように生きている私にも例外なくやってきて、今日から通う高校の入学式に、今、まさに出席していた。



静かに、厳かに行われる式典は、長く忘れていた新鮮な気持ちを私たちに思い出させるように粛々と進行する。



(高校では、上手く、やれるかな……)



シン、と静まり返った空間では、周りにたくさんの人がいるのに、より強く孤独を感じて弱気に拍車がかかる。



全身に緊張を滲ませながらも前途洋々な表情を輝かせる同級生たちの姿は、反対に私の不安を酷く煽る。


そんな大勢が犇めき合う空間に一緒くたに詰め込まれる私は、さながらドールハウスの中で自分の意に反して踊らされている人形で。



息苦しくて、生き苦しい。



それは、錘を巻きつけて海に身を沈められるような、そんな底なしの苦しみだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る