第64話 一か月の記録

 中間試験までの一か月間は、目まぐるしい勢いで過ぎ去っていった。


 早朝はリオンから指導を受け、長剣の使い方を学んでいく。

 日を追うごとに自分の技術が上昇しているのが分かるほど、俺は着実に力を身に着けていた。

 この特訓でステータスやスキルレベルが上昇することはないが、それでも今後のためには必要な特訓だった。



 続いて、鍛錬場での特訓。

 ルクシアからの魔法砲撃に耐えたり、『不死人形』相手にダメージを与えることによって、各パラメータと熟練度を稼いでいく。

 その過程で【プロテクト】、【瞬刃】、【ウォーターアロー】など、幾つもスキルレベルを上げることができた。


『スキル熟練度獲得 【プロテクト】のレベルが1アップしました』

『スキル効果が上昇します』

『スキル熟練度獲得 【瞬刃】のレベルが1アップしました』

『スキル効果が上昇します』

『スキル熟練度獲得 【ウォーターアロー】のレベルが1アップしました』

『スキル効果が上昇します』



 あとは実戦として、ダンジョン攻略だ。

 単独で【霊薬の庭園】を攻略することもあれば、リリアナたちとともに【英知の書架迷宮】を攻略することも何度かあった。

 レベル上げ、熟練度上げ、スキルオーブ探しを同時並行で行っていく。


 スキルオーブはドロップすること自体が稀なのだが、なんとこの一か月間でさらに3個も獲得。

 俺はそのうちの一つ、身体強化(小)を譲ってもらうことができた。

 これでヒーラーの弱点である身体能力の低さを、ほんのわずかとはいえ補えたといっていいだろう。


『経験値獲得 レベルが1アップしました』

『スキル熟練度獲得 【ディスペル】のレベルが1アップしました』

『スキル効果が上昇します』

『スキルオーブの使用により、スキル【身体強化(小)】を習得しました』



 基本はこれらのサイクルを回すのだが、もちろん時間が経つことに中身は少しずつ変化していく。

 まず、ユイナは着実に弓の実力を高めており、実戦投入できる頃合いになると鍛錬場の代わりに、ダンジョンで魔物相手に鍛えることが増えていった(もちろん、俺やルクシアも同行して)。


 個人的な話としては、レベルが35を突破したあたりから【霊薬の庭園】で経験値を稼ぎづらくなったので、上位のダンジョンに移行。

 も実験しつつ、より効率的に成長することができた。

 特に【ドラウプニル】を装備していたおかげか、MPの伸びが著しい。


 こんな感じで、ステータス的な成長については順調も順調だった。



 とはいえ、ただ愚直にレベル上げだけをやっていればよかったわけではない。

 並行して、フラグ管理をする必要もあったからだ。


 『ダンアカ』で発生した、幾つものサブイベント。

 主人公グレイの成長や、キャラの好感度上げに必要なそれらを邪魔しないよう、俺はまずリリアナを現場から遠ざけ、他にも細々とした対策を行った。

 その結果、どうやらしっかりとゲーム通りにイベントは進行しているようだった。


 少し例を挙げるなら、



①『心を通わせろ! 契約の儀』

 アカデミー南東に広がる川辺で、グレイの幼馴染であるミクが水属性の下位精霊と契約するイベントだったり。


②『狩場独占の冒険者を裁け!』

 グレイ、ミク、トールがダンジョン攻略に行った際、一般冒険者に絡まれてひと悶着起きたものの(幾つかのダンジョンはアカデミー生以外にも解放されている)、力を合わせて乗り越えたり。


③『大復活! アカデミー内を逃走する魔物を捕獲せよ!』

 研究のため仮死状態のまま搬送されていた魔物に、とある最強ルクシアが寝ぼけて放った雷魔法が命中してしまった結果、復活して学園内を暴走するペアボーンブル(レベル20)をグレイたちが必死に捕まえるイベントだったり。


④『幽霊騒動の真相を明かせ!』

 夜にアカデミーの校舎内に幽霊が現れるという噂話を聞いたグレイたち一行が捜査するも、その正体が校舎内で夜まで昼寝した後、歩くのが面倒だからと風魔法で浮遊しながら寮に戻るルクシアだと判明したり。



 他にも大小さまざまなイベントが発生したが、グレイはしっかりと全てを解決し、成長に繋げられていたようだった。

 ……え? が関わってる事件が多すぎないかって?

 それはまあアレだ、うん。ルクシアだから。

 説明はこれだけで十分だろう。



 とまあそんな感じで、苦労こそあれど日々は問題なく過ぎ去っていく。

 ちなみに、本来の計画に関係ないところでいくと――



 リリアナから町にあるスイーツ店に誘われて一緒に行ったり、

 ローズが『殿下とアレン様がそういう関係になるのはいささか尚早かと。し、しかし欲を発散しきれないようであれば、私を相手にしてくださっても……』とよく分からないことを言い出したり、

 ユイナが改めて、俺とルクシアに弁当を作って来てくれたり(なぜか前よりかなり豪勢だった)、

 寮の自室で朝目覚めたら、なぜか隣にルクシアが寝ていたり、

 ユイナの友人でありモブクラスメイトのミリャと授業でペアになり、少し仲良くなったり、

 いきなりアルバートから再戦を申し込まれたり(無視したが)、

 日々の鍛錬で疲労が溜まっていた俺を心配してか、保険医のエリーゼから労いで膝枕や添い寝をされるといった謎の出来事があったり。


 ――などなど、突発的なイベントが幾つも発生したりした。

 だけどまあ、こちらは特に重要じゃないため多く語る必要はないだろう。



 何はともあれそんな風にして日々は過ぎ去り――試験当日の1日前。

 俺は一人、試験前最後のダンジョン攻略に向かっていた。



――――――――――――――――――――


 アレン・クロード

 性別:男性

 年齢:15歳

 ジョブ:【ヒーラー】

 ジョブレベル:3


 レベル:38

 HP:3282/2830(+452)

 MP:1296/970(+326)

 攻撃力:393(+82)

 防御力:345(+61)

 速 度:370(+78)

 知 力:495(+102)

 器 用:322(+66)

 幸 運:355(+72)


 ジョブスキル:ヒールLV9、ディスペルLV4、プロテクトLV5

 汎用スキル:ファイアボールLV7、ウォーターアローLV5、瞬刃しゅんじんLV6

 パッシブスキル:身体強化(小)


――――――――――――――――――――



――――――――――――――――――――――――――――


ダイジェストで一気に成長したアレンくん。

ヒロインたちとの諸々のイベントについては、「こんなこと起きてたら面白いな~」と作者が考えた内容を羅列しました。

もし本作が商業化の機会に恵まれたりしたら、どれかをピックアップして執筆するかもしれないので、もし「これが読みたい!」という内容があればコメント欄でぜひ教えてください!

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