第14話 ステラアカデミー

 ステラアカデミーにやってきた俺たち新入生は、さっそく入学式が行われる講堂に案内され、式典がはじまるのを待っていた。


 煌びやかな装飾が施された巨大な建物は、まさにファンタジーらしさ満点の荘厳さを醸し出していた。

 金箔で縁取られた柱が整然と並び、中央に吊るされた巨大なシャンデリアは無数の宝石で彩られている。

 壁一面に設えられたステンドグラスからは虹色の光が差し込み、床に幻想的な模様を描き出していた。


 そんな華やかな空間に、新入生たちが整列している。

 集められた新入生の数は計150――否、149人(リリアナの留学が中断となったため、一人分の空席が生まれている)。

 新入生たちはA~Eクラスと、五つのグループに分かれて座っていた。


 そんな光景を前にし、俺は小さくない興奮を覚える。


(ゲーム開始時の光景そのものだ。俺、本当にダンアカの中にいるんだな……)


 感動も程々に。

 そもそも『ダンジョン・アカデミア』の舞台であるステラアカデミーとはどんな場所なのか、このタイミングで振り返っておくとしよう。


 ステラアカデミー。

 それはアストラル王国の迷宮都市『アルカディア』に設立された教育機関。

 貴族や平民問わず、さらには国外からも優秀な人材を招集し、優秀な騎士・魔導士を排出することを目的とした学園だ。

 世界最高峰の教育を受けられる代わりに、有事の際は解決に協力する義務がある。

 ここ数十年は使われていない制度だが、『ダンアカ』では二学年後半に発生する魔族との戦闘パートにおいて、クラス単位で投入されることとなる。


 そんな仕組みや哲学のせいか、アカデミーは実力至上主義を掲げており、入学試験の成績上位者から順にクラスが割り振られていく。

 Aクラスは幼少期から英才教育を受けていた貴族がほとんどを占めており、ほんの数人だけ才能ある平民が混じっていたりもする。


 では、物語の主人公が所属するクラスはと言うと、もちろんAクラス――ではなくEクラスである。

 『ダンアカ』の物語序盤は、才能がないとされていた主人公を中心に、学年の最下位から成り上がっていくシナリオが主となっている。

 そしてクラスメイトであるアレンも、同様にEクラスだ。

 

 とまあ、その辺りの振り返りも程々に。

 入学式自体は、学園長による説明や、


「――――よって、私たち新入生一同は、これからこの栄えあるステラアカデミーで学ばせていただけることを、心より光栄に思います」


 美しい金色の長髪を靡かせる少女――新入生代表、ユーリ・シュテルクストの挨拶を中心に行われ、滞りなく終了した。



 その後、案内に従い、俺たちは各々の教室へと向かう。

 ちなみにだが当然のようにAクラスからの移動で、俺たちEクラスは最後の退出となった。


「……ここだな」


 1ーEとプレートが書かれた教室の扉を開け、中に入る。


 入学当日だというのに、教室内には重たい空気が漂っていた。

 誰もが下を向いたまま、互いに目を合わせようともしない。

 まあ、それも仕方ないだろう。ここEクラスは、5クラスある1学年の中で一番下のクラス。

 入学試験での成績の下から30人が集められているのだから、各々で思うところがあるに違いない。


「さて、俺の席はっと……」


 ゲームでアレンはモブだったため、どこに座っていたか把握できていない。

 黒板に張り出されていた座席表を見たところ、窓際の一番後ろから二つ目らしい。

 そこから、アレンが入学試験で最下位の前、ブービーだったことが分かる。


(レベル9は、Eクラスとして決して低くない数値だと思うんだが……ジョブがヒーラーじゃ、そうもなるか)


 何はともあれ、席に座って周囲を見渡す。

 当然だがゲームにも登場したキャラクターが勢ぞろいしており、意識しなければ興奮で表情を崩してしまいそうだ。

 不審人物だと思われないよう気を付けなくては。


 そんなことを考えながら数分ほど待っていると、ガラリと教室の扉が開く。


「皆、揃っているな」


 ガラリと開いた扉から姿を現したのは、戦場を駆け抜けてきたかのような凛々しさを纏う美しい女性だった。

 肩甲骨まで伸ばした白髪と、闇夜のように深い黒色の瞳。


 Eクラスの担任を務める、『ダンアカ』のメインキャラクターの一人――リオン・コルニクスだ。



――――――――――――――――――――――――――――


アカデミー編開幕です!

どうぞお楽しみください!

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