梅雨の思い出
窓の外には鬱蒼とした森、耳に入るのは雨音
私は正しく深窓の令嬢なんでしょうね。
この館にはお父様と私しか住んでいません。来客はたまに来るお父様の仕事の関係者と定期的にくる家政婦さんだけ。
そして今は私一人だけです。なんてことでしょう、一人ボッチです。
まぁいつものことですが。
きっとここで私が全力で叫んだとしても誰も気がつかないのでしょう。
私の叫びより、朝を知らせるニワトリの鳴き声の方が価値がありそうです。
「.......はぁ」
木の葉の隙間から水がポタポタとこぼれ落ちてゆきます。
自然とはずっと眺めていても飽きませんね。
……嘘です。飽きました。
暇です。とてもとても暇です。
お父様は私に何もさせません。びっくりするほど過保護です。この前は椅子を持ち上げて運んだだけで叱られました。どうやら本当に箸より重いものを持たせたくないようです。
そんなに過保護なくせして、あまり私に関わって来ません。
お父様が興味あるのは私の保護だけでしょうか?
私を一体どうしたいんでしょう?
私を大きくさせてから食べたいのでしょうか?
……なんだかありそうな気がして来ました。
「.......」
あ、雨が一層強くなりましたね。
ポタポタという音からザーザーとなるようになりました。
……時間がやけに遅く感じます。
こんな時、彼なら何をするでしょうか?
家でぐっすり寝るかわちゃわちゃゲームしているのでしょうか。
「ふふふっ」
簡単に想像できてなんだか面白いです。
そういえば彼、足が早くなりましたね。
前の鬼ごっこでは後ほんのちょっとで捕まりそうでした。危なかったです。
このまま私たちが大きくなって行けば、彼の方が足が速くなるのでしょうか。
だって彼は男の子ですし。
ああ、これでは二度と鬼ごっこすることが出来ませんね。
だって負けたくありませんし。
彼には悪いですが勝ち逃げさせていただきましょう。
……お父様との約束もありますし。
それにしても、あの時の彼、カッコよかったなぁ。
「ボクちゃん」って馬鹿にされても必死に私を庇ってくれて……
おや?雨が上がって来ていますね。
彼のことを考えると時間が一瞬で過ぎます。
ああ、また彼に会いたいなぁ。会えるかな。
鬼ごっこはもうできないけど、彼とまた遊びたいなぁ。
「……けっほ」
なんだから胸の奥に違和感が……
むせ上がりそうな熱い塊がうごめいているような……
息も苦しくてなんだか目がチカチカするような……
でも気のせいと言えばそんな気もして……
……恋?
もしかしてこれが恋?なのでしょうか?
私にはちょっと分かりませんが、もしそうだとしたら______
ふふふっそれはなんだか素敵ですね!
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