公園の思い出
「今日は何して遊びます?」
「うーん、そうだなぁ……」
いつも通りの公園。いつも通りの日常。
だから今日もまたいつも通りあの子と遊ぶんだ!
だけど一つだけ、いつも通りじゃないところがある。
今日は少女の色が少し濁っているのかな?なんだか変な感じがする。
どういうことなんだろう。何か悩みがあるのかな。
「じっと私の顔を眺めてどうしたんですか?」
「いや、なんでもないよ」
慌てて誤魔化す。色のことは彼女にも秘密だから!
「それで何します?」
「うーんそうだな。今日は鬼ごっこしようか!」
もし、悩みがあるんだったら体を動かす方がいいよね。
それに……今日こそは少女に勝ちたい!
「鬼ごっこですかー?いいですよー!」
少女が余裕な表情で返事をする。
どうせ「私が勝つのに哀れですね」とか思っているんだな?!
今日こそは追いついてみせるぞ!
「じゃあ、さいしょはぐー、じゃんけん、ぽん!」
僕はグーを出した。
少女はパーだ。
「あなたが鬼ですね。果たして私を捕まえれますかねぇ」
「男の子をなめてもらっちゃあ困るね!」
そういうと、少女は「ふふ」と笑って走り出す。
それを見てから僕は目を伏せて、数を数える。
「じゅー、きゅー、はち、なな、ろく、ごー、よん、さー、にー、いちー、ゼロ!」
目を開けた。少女はどこだろうか……
いた!
もうあんな遠くにいるのか。相変わらず足がはやいなぁ。
僕は、少女を追いかける。そのために足を踏み出した。
〜〜
大地を蹴る、そして手を伸ばす。もう少しで届く。やっと背中に触れることができる。
あと少し、もう少し足を早く動かせば____
『みなさん、もうすぐ6時になります。事故などに気をつけて、早くお家に帰りましょう』
町内の定時放送が流れた。それに聞き入って僕たち二人は立ち止まった。そのままの勢いであっさりと少女の体にタッチすることができてしまった。
「もうそんな時間なんですね」
少女がそんなことを呟く。そんな少女の顔は夕日の色に染まっていた。
「もう時間か~」
もっと遊びたかったけどしょうがない。早く帰らないとお母さんに怒られてしまう。
少女は汗に濡れた髪をかきあげ、何か遠くを眺める。
「どうしたの?」
「いえ、今日もまた終わりなのかと思いまして」
「明日もまた遊べばいいじゃん!」
「そう……ですよね!明日もまた遊びましょう」
「明日もおにごっこしよう!」
「なんだと、おにごっこをやっていたのか?!」
後ろから知らない男の声。慌てて振り向く、大きな大人。
知らない男の人だ。
「お、お父様」
少女の言葉で、大人の正体がわかった。
この人が少女のお父さん。大きくて厳つくて怖い。
危険な赤だ。怒りの色が見える。
「走ったのか?ここでずっと?」
「……そうですけど」
「何しているんだ馬鹿!!」
大人が声を荒げて罵倒する。急になんなんだこのおっさんは!
「別にそれぐらいいいだろ、おっさん!!」
「なんだ?お前は誰だ?」
「僕のことはなんだっていいだろ!それよりも__」
「ぼくぅ?ボクちゃんは静かにしとけ、ほらあとで飴ちゃんを買ってやるからな」
「飴ちゃんがなんだよ!!いらないよそんなの!!」
「はぁ、ギャーギャー騒ぐな。猿かお前は」
「だ、誰が猿だ!!!ぼ……僕は人間だ!!!」
「はいはい、僕ちゃんは元気だね〜」
「ムカッ!!」
なんなんだこのおっさん!!ムカつく!!人をバカにしやがって!!!
「お、お父様」
「……なんだ?」
「もうやめてください」
「お前を心配しているんだぞ」
「なにが心配だ!走るぐらいいいじゃないか!」
「お前は黙っとけ!」
「私の体はみての通りピンピンしてますけど?」
「いいか、お前は何もわかってない。わかってないんだよ」
「だったら教えてくれよ!」
「……ガキにはわからんよ」
「そんなの逃げじゃないか!!」
「うるさい!!!!黙れ!!」
そう言っておっさんはコブシを振り上げた。
「お父様!!!……その手はどうするつもりなんですか?」
「…………フー、ちょっと頭に血が登っただけだ、悪かったな」
そういって、振り上げたコブシをバツが悪そうに下げる。
「はぁ……もういいですよ……」
「どうした?」
「どうせ、いつものことなんですよ。断りもなく走ったことは謝ります。だからもう、帰りましょう?」
「……まぁ、いいだろう。もう二度と走るなよ、約束だ」
「そんなの無理に____「約束します」
そう言って、少女はおっさんと共に車に乗った。
途中、少女が振り返って見せた表情は忘れられない。
悲しそうな、諦めの混じった表情。なんなんだ、あのおっさんは。
少女はあんな奴と一緒に住んでいるのか!?鬼ごっこすら許さない奴と!?
そんなの……そんなの酷いじゃないか……!!
それに人を小馬鹿にしたような態度!少女は好きだけど、あのおっさんは絶対に許せない!
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