トレーニング3

                                  「だから、こういう技かけたらこっちのコーナー側に転がるほうが得なのよ」

 アースのプロレス講座は、ほぼ毎日開かれた。

「じゃあ、こういう場合は場外へエスケープもあり?」

 俺よりもレックスの質問のほうが、回数も多く、そして質も良い。

「ありだけど、どうしても、残った側が孤立しちゃうから気にしながらだな。うん。でもケースバイケース」

「なるほど、そこ悩んでたんだよ」

 うん、うん、と頷きレックスはリング内をウロウロする。

「ウルフは無いのか?」

「いや、ちょっと・・・」

 レベルが高すぎて、俺の今までの自分の動きを押し付けるようなムーブがどれほど相手の良さを引き出せて無いか、と思うと恥ずかしくなって、いたたまれなくなっていた。

「とりあえずお前は、コーナーから飛んでろ」

 結局、アースからはぶっきらぼうに物申されるだけだった。

「あのさぁ、こういう場合もあって・・・」

 再び、レックスから質問が始まり、アースと二人でシチュエーション別のムーブの検証が始まった。

 俺は、暑くなってきた事もあり、練習用のマスクを脱ぐと、一人でコーナーからの飛び技を練習するために、ポストに登った。

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