第19話 

「聞いたかお前等!?」

「聞いた!ウソだよな!?」

「でも見たって複数の人が言ってんだぜ!?」


噂が瞬く間に広がったようで、教室がいつになく慌ただしい。

何というか、メガネだったり三大美女だったり彼氏がいるいないだったりと、噂の渦中に居続けるな最近。


で、今回だと文野に彼氏がいて、デパートで買い物をしてる姿を目撃し、更に仲の良さが伺えるものだったという内容の噂がまことしやかに流れてる。

その彼氏の姿はショートヘアーで高身長な男らしい姿とか。


「宮坂!お前何か知らないか!?」


文野とよく関わるからか、何か知ってるのではないかと俺を訪ねにきた男がいた。

周りの男共も、聞きたいのか一点に集中してる。

……コイツ、確か柴倉か。文野の事をブサイクと言ったような奴に情報なんて渡してたまるか。


「知らん。他を当たれ」


別に文野から周りに教えるなとは言われてない。

だけど、それはそれで、これはこれだ。知ってるが教える気は無い。少なくともコイツには絶対教えたくない。


「いや絶対知ってるだろ!」

「余裕な態度だし、まさかお前か!」


俺が彼氏、か。

周りから見て余裕な態度でいるように思われてるのなら、そう思うのも不思議ではないか。

だけど、俺じゃない。


「いんや?俺だったら今ごろ自慢してる」

「だったらお前、文野が他の男と歩いてて焦らないのかよ!」

「誰といようが文野の勝手だろ」


実際はいとこなんだけども、こいつ等にそれ教えて安心させてやる義理は無い。

やいのやいのとうるさいこいつ等が幼馴染に彼氏がいるって誤解して意気消沈して黙るのなら答えてやらない方が良い。


「文野に興味ないのかよ?」

「無いかあるかで言えばある。だけど交友関係にまで首を突っ込む気は無い」


俺の態度が気に入らないのか態度からしても声からしてもイライラした様子が見られる。だが、コッチがお前に対して苛立ってる事を伝えたい。

ずけずけと聞いてくるから思うのだが、例え家族でも余程の相手じゃなければ交友関係に首を突っ込まれるのは不愉快だ。

それが分からないのだろうか?……分からないからこうやって俺に聞いてきてるんだったな。

アイツは毎回こんなの捌いてるのか?よくやるな。今日はアイツの好きなココアでも買って行こうかな。


「どうなろうが興味が無い人間ってのがよく分かったわ人間モドキ」

「へーへー、人間モドキでよろしいざんすよ」


なんて考えてたら悪態をついて、柴倉は他に知ってる人が居ないか探しに去っていったようだ。

興味がないんでは無くて言う気が無いだけだが、答えなければ一緒か。


「アイツに賛同する訳じゃないけど、本当に興味が無いのか?」

「僕もその態度には心配だよ」


先程のやりとりを見ていたのか、橘と東谷がしかめっ面でやってきた。

他の男共なら言わないつもりだが、この2人なら言っても大丈夫だろ。


「ちょっと耳貸せ」


と言っても、誰かに聞かれるのも癪なので小声で伝えるつもりだ。

橘と東谷はそれに応えるように近くまで寄ってきた。


「今流れてる噂だけど、あれ、いとこなんだよ」

「あ、なるほど」


東谷はいとこだと知った事で俺の態度に納得がいったようだ。

橘の方はというと。


「……」

「どうした橘」

「なんか怖いよ?」


しかめっ面というか、考え込む顔というか、何か腑に落ちない様子だ。

そんな橘を見て俺は気になるし、東谷は心配してる。


「……宮坂。お前のその興味の無さも大概にしたほうが良いぞ」

「な、なんだよ急に」


いつになく低い声を出し、さっきの男と同じ様な怒りを俺に向けてるように思える。

俺は橘の怒りに触れるような事でもしてしまったのだろうか?


「ならお前に悪い情報を教えよう」

「悪い情報?」

「いとこ同士は結婚できるぞ」

「え……」


足元にある地盤が崩れたような感覚に陥った。

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