ゲーム世界の裏切り公爵家に転生していたので、最強従者達と一家滅亡フラグに立ち向かう

雲ノスウ

裏切り公爵家

 「コバルト様、到着いたしました。」

 

 御者に到着を告げられ馬車から降りる、目の前には大きな門が見えた。目の前に見える門の奥のでっかい建物は、ここエレメンタル王国随一の魔法学園アルカン。数多の大魔法使い達が魔法を追求し、数多の騎士達が研鑽を積んだとされている学園だ、今日からここが僕の学び舎となる。

 

 「情報としては知ってたけど実物を見るとやっぱでかいなあ~。」

 

 目の前の建物から原作のストーリーが始まった、なんならこれから始まると思うと感慨深い。

 

 「ここまで本当に長かった......!!何度死ぬかと思ったことか!」

 

 「だけどここに入学できるってことはとりあえずの死亡フラグは回避できたってことだよね、それでいいよね!!」

 

 とりあえず本編で起こることは置いといて我が家にせまっていた危機をやり過ごせたことを噛みしめていると、後ろからよく知っている気配を感じた。


 すっと頭を下げると頭上でブンっと空を切った音がする。横を見ると行き場を失った手を眺めながら目をぱちくりしている黒髪の少年がいた。 

 

 「久しぶりに会った幼馴染みなんだし肩組むくらいいいじゃんなあコバルト。」

 

 「どっちかというと腐れ縁だけどね、アルゴ。」

 

 「それなりに長い付き合いなのにつれないねえ~、しっかし相変わらず女みたいな顔してんな。」

 

 「生まれつきだよ、それにかわいいだろう?」

 

 「その気持ち悪いとこも変わってないのな......、まあ立ち話もなんだしとりあえず入ろうぜ。じゃないとお前のメイドさんに怒られちまう。」

 

 そう言われ振り返ると水色の髪をした僕の専属の付き人の少女、サラが無表情でこちらを見ている。あっよく見るとちょっと眉がひくついてるな、言われた通り中に入るとしよう。


 歩きながら少し雑談をしてアルゴと別れた後、学院の人に案内され入学式の会場に着いてしばらくすると学院長と思しき人が現れていろいろあった後、祝辞を述べはじめた。

 

 あくびをかみころし話を聞きながら、再び入学式原作開始前に至るまでを思い返す、事は7年くらい前に遡る。

 




 





 メイドの手を借り、姿見の前でいつものように服装を整えていく。


 鏡の前に映るのは背格好は5歳の男の子そのもの。灰色の少し伸びた髪、青色の瞳に女の子と見間違うほどかわいらしい顔立ち。うん、今日もかわいい。

 

 何度も見慣れたこの顔は同時に、ことに気づいた。


 瞬間脳裏を巡る、この世界で5年間生きてきた記憶とは違う世界の記憶。そしてその記憶の中に一番残っている、かつての自分が夢中になっていたゲームの世界にこの世界は酷似している。


 「コバルト様、支度が終わりました。」

 

 「うん、ありがとうサラ。」


 どうやら自分はそのゲームの世界に”コバルト・リーコン”という聞いたことがないキャラに転生してしまっていたらしい。




 とりあえず朝食ということでいつもの部屋に向かう、そして目の前で一緒に食事を取っている父親、フェイル・リーコンと適当に会話しながら情報を整理するとしよう。


 「コバルト、最近はどうだい?」


 ”エレメンタル・タクティクス”という戦闘系シュミレーションRPGは剣と魔法が使える世界で魔物や、時には人と戦い、支配されている土地を解放したりして王国に平和を取り戻すことを目的としたRPGだ。

 この世界はその”エレメンタル・タクティクス”の世界に酷似している。


 「はい、最近はマナーの講義も落ち着いたので、今は文字や計算などいろいろ学んでおります。近々歴史や地理についてなども講義があるそうです、剣の訓練も始まっています。」


 当然王国ということで王族もいるし、五爵位も存在する。そしてリーコン家はどこに位置するのかというと、公爵家なのだが少しおかしい。

 というのも原作のほうに登場する公爵家は2つ存在するのだがリーコンという名前はその2家のどちらでもない。つまりリーコン公爵家という名前は出てこないのである、原作とは違う世界なのだろうか。だけどなにか引っかかるような......。


 「そうか、しっかりやっているようだね。そのまましっかり励むようにね。」

 

 「......最近は父さんも母さんも忙しくてお前の相手をしてやれなくてすまないね。しかし最近は魔物が活発でね、もしかしたら魔族も関係しているかもしれない。だから落ち着くまでもう少し我慢してほしい」

 

 先ほどの様子はどこへやら、フェイルが急にしょんもり申し訳なさそうな顔で言う。その顔に少し、いやけっこうぎょっとしながら答える。


「はい、お二人が忙しいのはわかっているのでぼk、わたしはだいじょ......、まぞく、魔族?」


 体が震え、顔が青ざめていくのを感じる......。

 リーコン、公爵、魔族、魔物、これらを踏まえて思い当たることがあった、......しかも最悪なほうで。

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 ___家は王国の”盾”であった、魔物の住処に近い___家は、魔物から王国の民を守り___家もそのことに誇りを持っていた。しかしある事件がきっかけで___家は王国に反旗を翻す。その結果___家は滅び領民は逃げ領地は荒れ果て魔物が棲み着くようになった。 

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 これはゲーム後半に出てくる”荒れ果てた領地”というマップのフレーバーテキストだ。その領地はとある公爵家が治めていたらしい、王都から離れ魔物退治を生業にしている...、そしてここリーコン領は魔物の生息地に隣接しており、現在父と母が付近の防衛にあたっている。ここまでそろえば間違いはないだろう。

そう、つまり、本当に信じたくないけど、この世界は”エレメンタル・タクティクス”の世界であり、ゲームでクーデターを起こしそして滅びた裏切りの公爵家とは......、このである...。












 あの後魔物が怖くて震えていると勘違いされた僕は父に「大丈夫、大丈夫だよ。」と強く抱きしめられた、「魔物ではなく父上、母上に会えないのが寂しいのです。」とごまかしたら余計抱きしめられた。

 




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2024年12月27日 18:00
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2024年12月29日 18:00

ゲーム世界の裏切り公爵家に転生していたので、最強従者達と一家滅亡フラグに立ち向かう 雲ノスウ @yagano1da

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