現代最強の魔術師・白虎夜虎〜輪廻転生を経て、鍛えすぎた魔力は世界最強に至っていました。気づけば世界最強に至って五大貴族の美少女令嬢達に囲まれています〜
KAZU
第1話 魔人が生まれた日
心臓が止まった音が、病室に響き渡る。
結局押さなかったナースコールのボタンを握った手を開き、俺は静かに目を閉じた。
もういいや。もう……死にたい。
このベッドの上で物心つき、このベッドの上で死ぬ。この病室だけが俺の世界で、もう見る気もないテレビの向こうだけがこの世界。
生みの親はいるのだろうが、結局一度として難病を患って生まれた俺に会いに来ることはなかったな。
「…………寂しいなぁ」
そして俺は、枯れたと思った涙を流しながら……誰も掴んでくれない手を伸ばして人生の幕を閉じた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
輪廻転生――誰かが死ねば魂は巡り、またこの世に生を受ける。
そして、その日この世界に魔人が生まれた。
のちに紫電の魔人と呼ばれる才能がこの世に再び生を受けたのは、雷鳴轟く嵐の夜のことだった。
この世の者ではない雄たけびと、百余の悪鬼羅刹が、日本家屋の屋敷を囲んでいる。
それは、人の罪が具現化した化け物――
そしてそれから屋敷を守るように立つのは、
「俺の息子を食いに来たな。罪どもめ……」
魔術師の一人、筋骨隆々の革ジャンサングラスの男が一人、先頭に立ち、サングラスを外した。
腕まくりをして、にやりと笑う。
「才ある子の生誕にまれに起きる
次々と、襲い掛かる化け物。
男は、体に稲妻を纏い次々と黒い鬼を祓っていく。
その男の仲間たちも、その鬼を次々と祓っていく。
「ここは父さん達が命を懸けて守る!! だからお前も、頑張って生まれるんだぞ!! 夜虎!!」
外から聞こえる叫び声をかき消すように、部屋の中でもうめき声が聞こえた。
「うぅぅ!! うぅぅぅ!! あぁぁぁぁ!!」
「もう少し! もう少しです、奥様!!」
力む女性と助産師が、赤子を取り出そうとしている。
周りには、数えきれないほどの霊符が張られて結界で守られている。
「お…………ぎゃ…………」
赤子が産まれた。
しかし、弱弱しい声で今にも消え入りそうな声だった。
「はぁはぁ…………生まれた……の?」
「奥様……呼吸が止まりかけています!」
「そんな……だめよ、夜虎!! だめ! 夜虎!! 泣いて!! お願い! 泣いて!!」
和式の部屋で、助産師に赤子を渡された女が呼吸をしていない我が子を抱きしめる。
その手には緑色の光が灯り、必死に泣いてと願う。
「香織!! はぁはぁ! どうした!! 産まれたのか!!」
「あなた!! 夜虎が!!」
扉をバン! と開けて入ってきた父親は、ボロボロで全身から血を流していた。
自分の手も添え、我が子であろう赤子を抱きしめる。
そして優しく我が子と妻を抱きしめ、懸命に応援した。
「夜虎!! 目を覚ませ!!」
「お……ぎゃ」
「冷たい。まさか……魔力切れだと!? 産まれたばかりで……魔力が足りないなんて…………わかった! 少し強引だが…………俺の魔力を流すぞ!!」
「お願い、あなた!!」
そして男は、その赤子の胸に手を置いた。
バチッ!!
雷の魔力がその赤子をまるで電気ショックのように跳ねさせる。
直後、体に熱が戻り、赤子が泣いた。
「オギゃ……」
「よし!! もう一度だ!!」
「私の魔力も流すわ!!」
赤子からかすかに声が聞こえた。
二人は、赤子をぎゅっと抱きしめ、再度魔力を流す。
手が少し動く、声が少しだけ漏れる。
「
「頑張れ!! 俺の子だろう!! 頑張れ!! 頑張れ!!」
母と父は必死にその手を握った。
何度も頑張れと叫んだ。
その気持ちに応えるように、その赤子は大きく口を開いて泣いた。
「オ…………オギャーー!!」
「奇跡です。奥様!! 旦那様!! この子は……ご子息は、奇跡の子です!!」
部屋に赤子の声が響き渡る。
母は泣きながらその子を抱きしめた。
ありがとう、ありがとうと何度も言いながら。
父も同じように抱きしめた。
「きっとこの子は強くなるわ……だってこんなにも強く生きたいって言ってるんだもの」
「あぁ! きっと立派な魔術師になるぞ!! 俺なんか簡単に超えていくだろう!! この国を……日本を救う魔術師に!!」
二人は我が子を精いっぱいの愛をこめて泣きながら抱きしめる。
周りの全員が涙を流しながら、喜んでいる。
(…………へぇ? なんで赤ちゃん?)
俺だけがこの状況を理解できなかった。
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