第85話 ラスボス部屋

 

 俺達は、順調に塔のダンジョンの攻略が進んでる。

 俺も、良さそうなスキルを持ってそうな魔物から、ジャンジャンスキルを奪ってる。


『握手』スキルの派生スキル以外でも、スキルが得られてしまうって、本当に俺はどこまで強くなってしまうのだろう。


 何故だか、俺がスキルを得るのが、サクラ姫はとても嬉しそうだ。

 多分、自分の未来の旦那が強くなるのが嬉しいのだろう。


 そんでもって、俺、魔法も使えるようになっちゃったんだよね。

 人間も、13歳に女神様からスキルを得て魔法を使えるようになったりするから、魔物の魔法も、どうやらスキルだったみたい。


 ナナミさんも、多分、魔法系のスキルを得たから魔法使いを名乗ってる訳で、実際は、鍛冶師やら、魔道具師やら、建築士、はたまた、棍棒使いとか名乗った方が良いと思うけど。だけれども、魔法スキルを持ってるから魔法使いなのだ。滅多に魔法は使わないけど。


 それにしても、魔法を使えると戦闘の幅が広がる。


 俺達のパーティーって、全員前衛なんだよね。

 超攻撃的パーティーなのだ。今でも基本は、司令塔というか回復役として戦っていたけど、俺は、本格的に後衛で戦う事とした。


 うちらのパーティーって、実際、不安要素が多々あるのだよね。

 アマンダさんは、疲れたりHPが減ってくると、すぐバーサーカー化しちゃうし。


 サクラ姫なんか、呪いの影響上、HPやMPが元々少ないのだ。

 俺が、しっかりHP管理してないと、いつ死んでもおかしくない綱渡りの戦いをしているのである。


 一番、俺が守らなくてはならないお姫様が、一番ハイリスクハイリターンの戦いをしてるって、やっぱり、サクラ姫はトンデモない戦い方をしているのだった。


 こんなにリスキー過ぎる戦い方を子供の頃からしてたら、一体、13歳になったらどんなスキルを女神様から授かるやら……本当に楽しみである。


 多分、俺が井戸掘りばかりしてた子供時代より、サクラ姫の方が、余っ程、過酷で生と死の隣り合わせの生き方をしているのだから。


 そうこうしてるうちに、俺達『銀のカスタネット』は、75階層に到達した。

 俺は、魔物からスキルを奪いまくって相当強くなっている。

 多分、今ではナナミさんとも対等に戦えるだろう。


 まあ、ナナミさんって、奥の手をいっぱい持ってそうだから、本当に対等に戦えるかは謎だけど。


 そして、75階層を攻略して行き、フロアーボス部屋に到着したのだが、


「トト、なんかいつもと違うよ!」


 サクラ姫が、フロアーボス部屋を見て興奮してる。余っ程興奮してるのか、お子様モードだ。


「コレは、もしかしてラスボス部屋って奴じゃないかな?」


 アマンダさんが、真面目な顔をして指摘する。


 俺は、ナナミさんを見やる。

 ナナミさんは、一番歳上で、冒険者歴も長いので、何か知ってるかもと思ったのだ。

 だけれども、よく考えたら、ナナミさんって、マールダンジョンでも32階層で鉱石を取りに行ってただけだと、途中で気付いしまう。


 なので、敢えて、何も聞かなかったのだが、


「うん。コレはラスボス部屋で間違いない。まだ、武蔵野国に居た頃、一度、たまたま見つけダンジョンで、素材採取に精を出してたら到達した事がある」


 ていうか、まさかの回答。


 というか、ナナミさん、ダンジョン完全攻略した事があったのかよ!


「エッ?! それって、どういう事?!」


 アマンダさんが、ビックリした表情をして、ナナミさんに質問する。


「うん。まだ武蔵野国に居た時、たまたま森に採取に出掛けてたら、ダンジョンを見つけた。そして、そのダンジョンは、結構、貴重な鉱石が取れたからドンドン攻略したの」


 なんか、聞きたい回答ではない。

 鉱石の話じゃなくて、ダンジョン攻略の話を聞きたいのだ。


「違う違う。ナナミさんが、どうしてダンジョンを完全攻略した事があったのかって話だよ!」


 アマンダさんは、質問を言い換える。


「そういう事なら、した事はある」


 ナナミさんは、平然と答える。


「でも、そしたら、何でナナミさんがダンジョンを完全攻略した事が、誰にも知られてないのでしょう?

 普通、ソロでダンジョンを完全攻略したら、一大事件ですよね?

 国に所属してたら爵位を受勲出来ると思いますし。

 冒険者なら、間違いなくプラチナに昇格してる筈ですよ?

 なんてたって、未だに、ソロでダンジョンを完全攻略した人物など居ないのですから」


 サクラ姫が、もっともな事を言う。


「アッ……それなら、僕はその当時冒険者じゃなかったし、そのダンジョンは誰にも知られていないダンジョンだったので、しょうがない」


 ナナミさんが、なんかよく分からない事を言い出した。


「でも、普通は、ダンジョンを見つけたら国や冒険者ギルドに報告する義務があると思うのですが……」


「それは、誰にもダンジョンで取れる素材を奪われたくなかったから、誰にも内緒にしてた。

 お爺にも話してなかったし、おっととトト君は、私の旦那様だから話した」


 ナナミさんらしい回答だが、権蔵爺さんにも話さなかった事を、俺達に話してくれたのか?


「それは、なんでですか?」


 サクラ姫が、俺の代わりに質問する。


「夫婦は隠し事しないものだから。もう、お風呂で裸も見られてるから、僕には、もう、おっととトト君に隠すものなど何もないの……」


 何故だか知らないが、ナナミさんは、頬を真っ赤に染めて答えたのだった。


 ーーー


 面白かったら、フォロー、☆☆☆押してね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る