第83話 久々、手相占い

 

 俺は、今日、昼に目が覚めてしまった。

 サクラ姫やアマンダは、まだ寝ている。


 ナナミさんは?どうしてるのかって?


 ナナミさんは、多分、まだ一寸も寝てないだろう。

 昨日というか、今日の朝方まで塔のダンジョンで検証したトラップにインスピレーションを受けて、何か作りたいと言ってたし。


 なので、暇な俺は、久しぶりにマール王都に1人で行く事にしたのだ。


 実を言うと、昨日、継母の作ったサンドイッチに感銘を受けちゃったんだよね。


 継母は、パーティーハウスで家事をする事によって、グングン『家事』スキルのレベルと、派生スキルを増やして行ってるのだ。


『異世界レシピ』も、その1つ。


 俺も、継母に負けて居られない。

 俺も、もうそろそろ新しい派生スキルが欲しいと思ってるのだ。


 俺が持つ『握手』スキルは、本来、戦闘系のスキルじゃないから、どんだけ魔物と戦っても、スキルのレベルは全く上がらないのである。


 てな訳で、今日は王都の自由市場で、久々の手相占いをする事にしたのである。


「オッ! 手相占いの兄ちゃん、久しぶりだな!」


 顔見知りの串肉家のオッチャンが話し掛けてくる。


「ああ。今日、手相占いするから、みんなに宣伝しといて!」


「腕相撲はやらないのかよ?」


「腕相撲は、今度かな。今日は初心に戻って手相占いする事にする」


「ああ。そういえば、兄ちゃんって、元々、カスタネット領で有名な手相占い師だったんだよな。なら、今度また、腕相撲やろうな!」


 この串家のオッチャンには、いつも負けてやってるから、俺に滅茶苦茶優しいのである。

 サクラ姫は、いつも串肉をサービスしてもらってるし。


 でもって、久しぶりに手相占いを始めたのだが、ものの数分で長蛇の列。


 まあ、久しぶりに俺が手相占いを始めたのだからだけど、また、俺がいつ手相占いをするか分からないので、こんなに人が並んでるんだとか。


 いつの間にか、サクラ姫の護衛が現れて、待ち人の整理をしてくれてるし。


 そうこうしてると、何故か、サクラ姫と継母と、それから俺の最愛の妹、リーナまで現れた。


 なんでも、リーナがパーティーハウスに遊びに行ったら、俺は居ないし、サクラ姫は寝てるし、それで、継母に俺が何処にいるのか聞いたらしい。


 そして、マール王都に居ると分かったら、リーナが、俺に会いたいと駄々を捏ねて、だけれども、継母とリーナだけでは、王都への道中危ないという事で、寝ていたサクラ姫を起こしたらしい。


 まあ、サクラ姫は、俺に置いてかれてプンプンだよね。

 俺と初めて会ってから、ずっと一緒だったし。

 実は、こんなにサクラ姫と離れたのは初めてだったかもしれない。


 で、合流したプンスカのサクラ姫と継母とリーナも、なんやかんや、俺の手相占いを手伝ってくれる。


 サクラ姫とリーナは、もう客引きなどしなくても良いのに、客引きを頑張り、継母は、お客さんに飲み物や茶菓子をだしてくれる。

 なんか、俺の手相占いの店が高級店になったみたい。


 実際、その辺の高級店より人気も有り、よく当たるんだけどね。


 ただ、高級店と違う所は、その値段。

 未だに、創業当時の値段で据え置きしてるし。

 まあ、それはたくさんの人に来て貰って、俺が握手したいだけなんだけど。


 握手すればするほど、スキルポイントが上がるからね!


 そんな値段が安い事もあるのか、俺の手相占いの店は、手相占いの店であるというのに、回転がめちゃんこ早いのである。


 まあ、後ろにたくさん人が並んでるので、プレッシャーもあるのかもしれないけど。


 継母も、勝手に1人5分と設定して、その『家事』スキルを駆使して、うまく5分で出て行くように誘導してるし。


 継母って、こんなに有能な人だったの? て、本当にビビるんだけど。


 実家では、全て使用人に任せて、全く動かなかった人なのに。

 今の働く継母は、本当に活き活き生きているように見える。


 どんだけ、俺に尽くせば気が済むのだろう。


 人って、変われば変わるんだなと、本当に思う。

 まあ、うちの長男カークのように全く変わらない人間も居るのだけど。


 リーナの話によると、もうカークに対しては、父親のカスタネット準男爵も継母も諦めてるらしい。


 最近、マール王国の王様から手紙が届き、カスタネット準男爵の跡取り息子は、優秀なニコル兄にするようにとお達しがあったようだし。


 どうやら、俺の下工作が上手くいったようである。


 まあ、王様も、俺の実家のカスタネット準男爵の跡取り息子が不出来なカークじゃ心配だったのだろう。

 絶対に、俺のカスタネット子爵家に迷惑掛ける未来が想像できるから。


 その点、ニコル兄は、マール王国学園始まって以来の優等生で、今では、Sクラスの副級長を任されてるしね。因みに、級長はクレア姫ね。


 流石に、どんなに成績優秀でも、王族より上の地位にはならなかったみたい。


 まあ、王様も、ニコル兄が、クレア姫と同じクラスだから、ニコル兄の人となりをよく知ってたみたい。


 跡見人も、王妃様のお姉さんのステラ学園長だからね。


 王様にとっても、カスタネット準男爵家の跡取りをニコル兄にする事は、理にかなってる事だったのだ。


 まだ、何も知らないのはカーク兄だけ。

 まあ、今話しちゃうと、何しでかすか分かんないから。


 気付くのは、ニコル兄がカスタネット準男爵家の爵位を継ぐ時になるだろう。


 今から、カーク兄が悔しがる姿が楽しみである。


 ーーー


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