7 人間シリーズ

零崎矛識の人間フォーシュア


1  「さぁ絶対なる零崎を続けよう」


零崎一賊と呼ばれる存在を知ってるだろうか?

裏世界に、またはそれに属するものなら一度は耳にするだろう『殺し名』と呼ばれる殺し屋たちの存在を

そうして、『殺し名』の中でも最も嫌われているとされる『零崎一賊』―殺人動機が[理由なく殺す]という最も無差別殺人が似合いそうな者たちの存在を

それよりも、最も畏怖すべき点はほかにあるが、まぁおいおい説明していこう


「かははっ、まさか俺以外に零崎の“血”縁者がいるとは思いもしなかったぜ」


―顔に入れ墨をでかでかと入れた齢十四程度の少年はそう口を開く


「―それは、同意するさ」

「ハッスルするのは、勝手にどうぞと言いたいがせめてできた子の存在を報告しないとはこれ如何に―」


まったく呆れた両親だ―なんて思っていると入れ墨を入れた男の子も同じく呆れたように口を零す


「違いねぇ」

「―あぁ、自己紹介を忘れていた」

「私は、『零崎矛識』―『心身欠損』で使用武器は『人体』」

「俺は『人間失格』の『零崎人識』で使用武器はナイフ―ヨロシク」

「あぁ、よろしく頼む」


―案外、対話でどうにかなりそうで助かった

いや、『零崎』自体仲間意識―否、家賊意識が異様に強くできているんだったな


「それじゃぁ、新たな零崎を仲間に引き入れた歓迎会を大将たちがすると思うが大丈夫か?」

「―そいつらは血縁者ではないのか?」

「あぁ、兄貴と大将と曲識のにーちゃん―それとリルに伊織ちゃんが今のところ関わり合いがある」


―伊織ちゃんと曲識のにーちゃん以外あだ名で何一つわからないのだが


「まぁ、実際会っておいおい説明してくれ」

「ん」


―そうして、人識についていくとお世辞にも綺麗とは言いずらいアパートに着いた

名前をどうやら[骨董アパート]というらしい


「このアパートに何の用なんだ?」

「あー、『欠陥製品』に会いに来た」

「『欠陥製品』だって?」

「あぁ、ER3システム中退の『欠陥製品』だ」


そんな爆弾発言をしだした人識をいぶかしむように見ると


「嘘じゃないさ―なにせ俺の鏡だからな」

『鏡』とそう表現をしたその男を確認しようとすると、いきなり〈ガチャリ〉と扉が開いた


「よう『欠陥製品』」

「やぁ、『人間失格』」


『人間失格』は笑い『欠陥製品』は笑わなかった―あぁなるほど確かに鏡だとそう表現をするのが最も適している


「それで 何の用だい?」

「なに、俺の同類だ」

「俺と同じ両親から生まれた零崎の紹介だな」

「全く、傑作だろ」

「いや、戯言だね」

「こんにちは、零崎―僕は『戯言使い』だ」

「あぁ、こんにちは『欠陥製品』君」

「私は『零崎矛識』―絶対にして究極の代用品だ」

「ちなみに、質問だがなぜ名前を言わない?」

「あぁ、僕の名前を知ったものは絶対として例外なく死ぬからさ」

「かつての橙然り、狐さん然り」

「だから、もし僕の名前を知ったら死ぬんだと思った方がいいよ」

「ま、戯言だけどね」

「―そうか、『欠陥製品』否、『戯言使い』であるお前は、西東天―即ち『人類最悪』の敵だった者か」

「何、そんな驚くことではないだろう?」

「あの戦いで二人の『殺し名』が死んでいったのだから」

「―『死神』石凪萌太、『殺戮奇術集団匂宮雑技団』〔人食い(マンイーター)〕匂宮出夢並びに匂宮理澄〔人食い(カーニバル)〕―どちらも強き敵であったのに」

「全く、『無為式』故の芸当なのだろうが」

「おーい、矛識あまりその話を掘り返してやるな」

「―あぁ、すまない少し取り乱した」

「いや、大丈夫だけど」

「ということは、今『死線の蒼』―いや、玖渚友が居るのか」

「すまない、人識話が終わるまで少し席を外す」

「え?あぁ―」


あぁ、まったく油断したER3を中退したなんて『戯言使い』以外に存在しないことを

かつて、『人類最終』と呼ばれる『橙なる種』を殺した存在を忘れかけていたなんて


「おーい、矛識そろそろ行くぞ」


いや、これらはまた後で考えるとしよう


「あぁ、今行く」

「―そういえば、『欠陥製品』の存在を知っていたんだったら教えてくれたらよかったぜ」

「すまない『戯言使い』の存在をすっかり失念していたんだ」

「忘れやすい体質なのか?」


―本気で心配しだしたら厄介だ


「いや、なに―少し靄がかかっているせいで少し曖昧なんだ」

「あまり、害はないのだから大丈夫だろが―」

「そうか、かははっ、これから大将たちに合わせよとしてたから体調を壊しているなら又にするところだったぜ」


子どもの様にはしゃぐ弟の姿を見て少し呆れてしまったが、それもまた愛嬌なのだろう


「そうだ、俺と矛識どっちの方が兄なんだ?」

「さぁ?それはわからないが少なくとも人識―お前が生まれてすぐに両親が死んだと『凶獣』というハッカーから情報を得たはずだ」

「なら、むぅにーちゃんの方がいいか」

「いや、いいさ矛識で」


「大将ー!」

「どうしたっちゃ?」

「『心身欠損』―零崎矛識だ、よろしく」

「新しい零崎を見つけたっちゃね」

「んじゃ、自己紹介―『愚神礼賛』の零崎軋識だっちゃ」


!―コレは驚いた、大将🟰『愚神礼賛』とは


「あぁ、零崎一賊三天王の一人だったか?」

「そう言われてるっちゃ」

「なら、『自殺志願』と『少女趣味』もいるのか?」

「―お前零崎になる前何者だったっちゃ」

「別に、こいつ以外にも生粋の殺人鬼は居るんだぜ?」


私は歪な笑顔を浮かべる


「それに、こっちに足を突っ込んでいると必ず零崎の名は聴くから嫌でも知れるさ…まぁ『少女趣味』に関しては最後に表沙汰に出たのは【大戦争】だったか?」

「不思議そうな顔をしてるな―つまり噛み砕いて言えば、零崎零識と零崎機織の間に生まれた生粋の殺人鬼は1人じゃなく―3人居たってだけの話だ」

「おいまて、3人居たってどういう事だ?」

「あぁ言ってなかったか?元々長男であるこの俺―零崎矛識、長女である零崎唯織―次男である零崎人識の三兄弟だ」

「なら、なんで唯織は居ないのかってなるよな?」

「―まっ、理由は単純明快」

「俺は『絶対』の継承者であると同時に『完璧』の強奪者だからだ」

「―おっと、勘違いするなよ?」

「零崎を続けようとした俺と終わらせようとした妹の兄妹喧嘩の末、命を落としただけだからな」

「それに『完璧』の強奪者とは名ばかりのハリボテ―『砂漠の狐』をなぞって言うならば《ジェイルオルタナティブ》か…まぁ失敗作が付くがな」


やはり、私は愉快に口を歪ませ嘲笑うように言葉を続ける


「そもそも、私の妹は産まれるべきではなかったのだろう」

「―否、産まれる時を間違えたのか」


否定―それはかつて存在した姫の真似である


「ふん、それこそ戯言であり冗談であり傑作ですらありえる」

「―否やはり否定しておこう」


そして再度否定―故に肯定


「何せ、この世界と言うのは対になる者が必要なようだからな」

「―何だ、気付いていないのか?」

「『零崎』という殺し名は対になる呪い名が存在しないとされている―なぜだと思う?」

「知るわけないよな」


と、私は喋る―吐き捨てるように、ただただ音に乗せて全てを吐き出す


「零崎を終わらせる者―今回で言う所の『零崎唯織』が、だ」

「零崎においての対に当てはまる…まぁ、零崎の対極の対極の対極ーつまるところ存在しうる存在か」

「『零崎唯織』が産まれたが故に俺は『絶対たる零崎』として育てられた」

「今零崎が滅ぶのは正しき歴史では無いからな」

「…だが、最後は零崎も滅ぶのだろう」

「それは揺るぎない事実であり理でしかしかない」

「それも『橙なる種』よって滅ぶのだから皮肉でしかないか」

「……ここでは時間では死んでいることになってたか」

「全く、『最悪』だ……いや、『砂漠の狐』の言うことを鵜呑みにしてる俺も『最悪』か」

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