オレンジのはんぶん
入相アンジュ
ひとさじの群青-1
拝啓 今年も残すところあとわずかとなりました。いかがお過ごしでしょうか。
さて、突然、こんな手紙を送って驚かせただろうと思います。でも実際、貴女にあって話をすると私の口からは切り出せないので、こうして手紙を送ります。
これで貴女と連絡するのは最後にしようと思っています。もう二度と会いません。貴女からの連絡は受け取る気はありません。
貴女が旦那さんとの蟠りを抱えており、それを打ち明ける相手……言いかえれば、彼を忘れさせてくれる誰かを必要としていることはわかっています。私も、答えられるなら答えたいと思っています。だからこそ、これ以上貴女と会うことが怖いと思っています。おそらく、あと三回も会えば私は貴女に恋をするでしょう。私と貴女の関係は、性愛も恋愛も排除したギリギリのところで成立しています。そのくせに、私が男で貴女が女性であることが何よりも特別感を駆り立てるものでした。けれども私達は恋仲ではない。けれども同じく植物がすきで、あの花や木を育てた時間を、尊敬を持ったまま、私は終わりにしたいです。
貴女に恋をするのが怖い。私は恋愛経験がほとんどないのですが、きっと貴女への感情はこのまま何も手を打たなければ恋となること、同時に、貴女との恋愛は碌な結果にならないことも理解しています。貴女には配偶者がいて、貴女は彼を愛している。
仮に____これは最悪な空想ですが____貴女が彼と別れて私と恋人になったとしても、きっと貴女は第二、第三の私のような立ち位置の男性を見つけるでしょう。貴女のその姿を私は責めたくありません。なぜなら私も貴女に加担しているからです。それに貴女のその性質を変えてしまうことを私は望みません。私は貴女の人生に介入する気などないのです。だから私は貴女と距離を置くべきでしょう。
この私の恐怖を貴女が正確に受け取ってくれると嬉しいです。でもきっと難しいでしょうから、一緒に小説を送ります。私が書いたものではありません。高校二年の時、友人の高校の文芸部の文集に収録されていたものです。もっと言えば、文化祭で友人が買って、わざわざ私に渡してきた話です。私はあまり小説を好まないので出来不出来はわかりません。ただ、ペンネームが
読んだ上で私の話の先を聞いてください。
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