妻の秘密を…知ってしまった
Nyamu
第1話 妻の秘密を知ってしまった夫 ①
違和感は感じていたんだ。
妻と初めて会った時から、付き合って、結婚して…そして幸せな結婚生活をしている今の今まで…。それがなんなのか、ずっと、ずっと分からなかった。深く悩んでいたわけではない。でも事あるごとに、ひっかかっていた。
妻とは大学で初めて出会った。
遠い親戚だったり、幼馴染だったり、俺が知らずに出会っていたなんてことはなく、間違いなく初対面は大学生の時。同級生で同じ講義が重なりお互いに顔は見慣れていった。それから一緒のゼミになり、過ごす時間が増えたことで、一気に仲良くなれた気がする。
俺も妻も、互いに恋心があったわけではない。
俺はイケメンではないが、男女問わず人に関わるのが好きで、いろんな奴に話しかけていた。だから重なった講義の学生とは声を掛け合い、コミュニティを広げていった。妻にも勿論、話しかけたのは言うまでもない。
逆に妻の方は、大人しく見た目も地味で、ポツンと一人でいるのをよく見かけた。
女の子同士のコミュニティに入るのに出遅れたのか、わざと一人でいたのかは分からない。けれど高校までと違って、良くも悪くも一人でも目立たないのが大学生なのである。
一年間の交流、二年時からの同ゼミで更に仲を深め、三年目の就活と言う大変なときに告白したのは、今思うと無謀だった。就活に集中したいからと断られ、泣く泣く諦め…るわけもなく、お互いの就活が終わったらもう一度告白するからなと、情けない捨て台詞を残してしまった。
翌日同じ会社のOB訪問で、顔を合わせた時の気まずさは生涯忘れられない。
現在夫婦として暮らしているんだから、告白は成功して今ここにいるんだろ?と言われれば、ハイそうです。話なげぇよと思うだろうけど、間違いなく妻とは大学で初めて知り合い、そして愛を深め合ったことを知って欲しかった。
じゃあ…最初の違和感はなんなんだ、という話に戻る。
*
妻が俺とは初対面なのも、本人の言葉を信じるなら間違いない。嘘でも俺は信じちゃうけれども。でも、俺の方が妻と初対面な気がしなかった。会うたびに、何かがひっかかる。他人の空似?、どこかですれ違った?、実は幼少の頃に会ったことがある?、どれもピンとこなかった。
それはつき合って、同棲して、結婚してからも同じで、一緒の時間が増えれば増える程、増していった。外では大人しい妻が、俺と二人だけになるとビックリするくらい明るい性格を見せてくれたことで、違和感はマシマシになっていった。
負の感情なんて全くない。
違和感の正体なんか分からなくても、妻が一緒にいてくれればそこはもはや天国。
だから無理にでも解き明かそうなんて、思ってもいなかった…この目の前のDVDを見るまでは。
『フェチ全開!アイ12歳。~セクシー競泳水着で君と戯れる大人な夏の海♡~』
なんだこれは…なんてことはない。俺んだ。
勘違いしないでほしい。俺は決して、ロリコンではない。
だけどこのDVDは俺のだ!…ぶっ飛ばされそうである。
だが聞いて欲しい。
これは俺が小学6年の時、貯めに貯めたお小遣いで買った至高の逸品。
友達の家に遊びに行ったとき、友達の兄ちゃんが内緒で見せてくれた、このDVDの女の子に俺は一目ぼれをした。恥ずかしくてDVDを譲ってほしい、なんて言えなかったので、題名を必死に暗記して家に帰ったのを覚えている。
当時の俺ではとても手の届かない値段だったのは言う間でもなく、必死になって家の手伝いをし月々のお小遣いを貯め、半年かけて手に入れた。親に内緒で隠れて見たのも良い思い出だが、現物を見るまですっかり忘れていた。
スケベ心で、あの後も友達の家で少々Hなのを見せてもらったりしていたが、大事故に合ってこのDVDの記憶が消えていたんだ。事故…事故だよな、友達の兄ちゃんの趣味に何かを言う気はないが、小6の俺にアニマルポルノは…速すぎた。
まぁ、それはどうでもいい。
とりあえず、久しぶりに実家に帰って俺の部屋を漁っていたら、このブツが出てきて長年の違和感の正体がわかった…わかってしまった。
俺の初恋、下手すれば初めての精通の教本。
じいちゃんが『儂が亡くなったら棺桶にこっそり、これを入れといてくれ』と神妙な顔で渡してきたUSB(中身は洋物の…)みたいに、いつかは俺もこのDVDを棺桶に入れて一緒に燃やしてくれと、子供に頼むつもりでいたくらいだ。
安心してほしい、じいちゃんは、まだまだ元気である。
*
さて、違和感の正体がわかってしまったとは言え、それが勘違いかもしれない可能性は多分にある。なのでこのDVDの中身を確認するのは必須事項であり、あくまで、あ・く・ま・で確認のためであり、邪まな気持ちは一切持ってない………。
何度も言うが、俺は妻を愛している。そしてロリコンではない。だが、妻の小さい頃の姿を見て興奮したりはしないが、今の妻と重ね合わせて見てしまうかもしれないのは、仕方ないことだと思う。
つづく
次の更新予定
妻の秘密を…知ってしまった Nyamu @Nyamu2023
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