第十一章 くっつく彼女と見つける彼女
#24
◆私達は強敵達を退け、冥府の大口を下り続けた。エルテももうすぐ上位種へ仲間入り出来そうになった頃、辺りの景色を形作る構造物が変わってきた。
最初は大き過ぎて分からなかったけど、巨大な骨だと思う。それが何本も何本も遠くまで続き、高さで言えば5層分くらい。
巨龍骨の洞。つまり創生龍の亡骸の体内に今私達はいるのだろう。これほど大きな生物が居たとは俄かには信じられない。
そこから更に下り、ティオが目覚めた大穴の底に着いた。体感的に80層目くらいだと思う。急に魔物の気配も無くなり、巨大な空間が静まり返っているのが逆に不気味だった。
辺りをキョロキョロ見るティオはシホに話しかける。
「僕がここから登った訳、もう一つある。奥からなんか嫌な感じがした」
「嫌な感じ?」
「僕に似ているけど何か違う。力の塊みたいなもの」
「もしかしてそのせいでここには魔物も居ないのかな」
「分からない。とにかく気を付ける」
メリランダはシホ達の不安を他所に、巨大な骨を杖でコツコツと叩いて少し嬉しそうにしていた。
「これが創生龍の骨ですか。もっと希少なものかと思っていましたが、こんなに大量にあるのですね。にも拘らず、例の冒険者はこれの一部しか持ち帰れなかったとは・・・・、余程余裕が無かった状況だったのでしょう。ともあれ、私達はその一番深くまで潜った冒険者の記録と並んだのですよ?つまりここからは本当の未踏区域です。やはりシホさん達を信じて良かったです」
「喜ぶのは無事帰れてからだよ。秘宝の在り処もどこが最深部かも分からないし」
「ええ、そうですね。でも必ず帰って、私は一族の名誉を取り戻してみせます」
やる気と好奇心に満ちたメリランダは疲れなど吹き飛んでいる様だった。シホ達もティオの言う“何か”を警戒しながら奥へと進んで行った。
僅かではあるが、だんだんと大空洞の幅が狭まってきたのが分かると、ティオが足を止める。
「近い。僕が感じた力がこっちに来る」
すると奥の闇からドスンドスンと空気を震わせる地響きと、ただならぬ威圧感が伝わってくる。真っ黒な空間を割くように、更なる黒が顔を出す。シホ達はそれを見上げ慄いた。
「フシュルルルルルー」
吐息なのか鳴き声なのかは分からない。二頭の巨大な龍の形をした存在達が、ゆっくりこちらへ近づいてくる。
その体からは無尽に湧き出るような黒い腐肉がぼとぼとと垂れ続け、強烈な腐敗臭をまき散らす。その醜悪な見た目に似つかわしくない、美しい五色の宝玉が二頭の龍の額の上にそれぞれ輝いていた。
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