第8話
私のスマホが震える。」神田さんだ。
「どうだ。分かったか」
「いえ、まだ」
「お客さんが、このまま待ってればいいのか、やり直した方が良いのかって聞いてるんだ。どうすればいい」
「ごめんなさい。分からない」
「美馬さんか、賀屋さんいないの」
「二人とも、ここで待機の予定だったんだけど、ソフト制作の新しい本部長の歓送迎会だって言って、山バカ、いえ、山中本部長が連れて行っちゃいました」
「何やってんだ、山バカは。美馬さん呼び戻せないか」
「すぐ呼びます」
スマホを一旦切って、美馬さんに電話する。手が震える。
「はい、美馬。未希ちゃん、どうしたの」
「あの、丸山商事さんの月末処理が終わらないって。いつもなら15分で会わるのに、30分経っても終わらないって。
お客さんがどうすればいいかって、あの、3日前私が変更したプログラムです」
「お客さんの所に誰がいるの」
「神田さんが」
「分かった。すぐ戻るから、変更したプログラムのソースと、変更内容、テスト結果の資料揃えておいて」
15分位で美馬さんが戻ってきた。
「未希ちゃん、絶対大丈夫じゃなかったの」
「ごめんなさい。どうしたらいいか分からなくて」
美馬さんは私が用意した資料をパッ、パッと見る。
「未希ちゃん、テスト、どのサーバでしたの」
「会社のテスト用でしました」
「そっか、神田さんに電話して」
私のスマホで神田さんを呼び出す。
「未希、分かったか」
「いえ、美馬さんに代わります」
「神田君、美馬です。お客さんのサーバのスペック教えてくれる。CPUの種類、メモリ容量、ディスク容量、同時に動いてるプログラムがあればそれも。このまま待ってるから」
美馬さんが私のスマホを耳に当てながら、空いた手でPCのキーボードをたたいてる。
「はい、CPUが、うん、メモリ、うん、ディスク、同時、うん、分かった。
それじゃ、処理やり直そう、お客さんの入力データは大丈夫ね。神田君、ノートパソコン持って行ってるよね。20分位したら、対策したプログラム送るから、ノートパソコン宛に、それ使って。
今、動き続けてるのは止めちゃえ、強制終了。このプログラム、頭から2つ目でしょ。1つ目は正常に終わってるわね。それじゃ用意して待ってて。
え、お客さんに説明、そうね、必要ね、お客さんに代わってくれる」
「美馬です。いつもお世話になっております。この度は申し訳ありません。
先日対応させて頂いた変更ですが、処理は問題なかったのですが、CPUとメモリを多く使いすぎるようになったためこれまでの数倍の時間を要するようになりました。
この対策版を急遽用意しますので、そのプログラムで再度実行お願い致します。はい、そうです。よろしくお願いします。
申し訳ありませんが、神田にこの電話戻していただけますか」
「神田君、お客さんに了解頂いたから。それじゃ、少し待ってて」
スマホを私に返して、美馬さんがキーボードをすごい速さでたたく。
「未希ちゃん、テストの用意、テストデータあるわね」
「はい」答えてテストの準備をする。
「今、プログラム、サーバに入れたからテストして」
「すみません。今準備してます」
「早くしなさい。でも、間違わないようにね」
準備が終わった。すぐテストする。
「終わりました」
「結果は」
「正常です。なんか、すぐ終わっちゃいました」
「軽くしたのよ。そのプログラムをサーバからコピーして神田君に送ってくれる。分かる」
「大丈夫です」
美馬さんに言われた通りに作業してから、神田さん電話する。
「今送りました」
「今来た。前のを削除して、これでやればいいんだな」
「はい、お願いします。あっ美馬さんが、処理が終わったら連絡くれって」
「分かった」
15分位したところで、神田さんから連絡。
「正常に終わったよ。助かった。この後まだいくつか処理があるから、全部終わるまで、俺、ここにいるからさ。そっちも連絡着くようにしておいてよ」
「はい、ちょっと待って、美馬さんに代わります」
「神田君、未希ちゃんと私も最後まで待機してるから、何かあったら未希ちゃんに連絡して、そう、お願いね」
助かった。美馬さんがいて本当に良かった。
「私のプログラム、どこがいけなかったのでしょうか」
「会社のサーバはみんなで使えるように、CPUは高スペックだし、メモリも多く入れてるでしょ。
でも普通お客さんの所はそこまではない。未希ちゃんの変更でCPU能力やメモリを多く使うようになっちゃたの。
それで処理が終わらなかった。CPUやメモリの利用を小さくするように変更したらうまくいったの。分かった」
「そのやり方教えて下さい」
「明日教えてあげる。それより、おなか減ったわね。誰か戻ってこないかな。そしてら、1階の居酒屋で何か食べよう」
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