1話 パチンカスまっつ

パチンカス歴20年のまっつの指は震えていた。

今日は地元有力ホールの年に一度の周年イベントなのだ。

彼の指は抽選に全身全霊、魂をかけて押下するために武者身震いを隠せないでいる。

決して気持ち良くなる薬やアルコール依存症ではない。


これまで彼の戦績と言えば、散々足るもので、1000人集まれば990番。

50人集まったところで45番を引き当てるなど、語るに尽くせない物語が溢れているのである。


今日こそは、今日こそはと幾度となく死闘を繰り広げた抽選ボタンを前に武者身震いが隠せないのだ。


ガガ~ピピ~

抽選機は無情な音をたて、彼の番号を払い出す。


まっつは震えた。そして神に感謝した。いや、世の中の生ける生きとしパチンカスに勝ち誇った。


彼に与えられた番号は25番。1000人をこえる中での25番である。

危うく気を失いそうになる自分を奮い立たせ、仕事道具のカチカチ君をバックにしまいこんだ。



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抽選:現在のホールは並び順ではなく。抽選にて入場順番を決めている。

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