第21話 神
眩しい日差しに照らされキリエは目を覚ました。
目の前のアクリョーはばつが悪そうにキリエの寝顔をが眺めていた。
「おはよう。昨日は、その、悪かったな。」
キリエは背を向けるように寝返りを打った。
「もう気にしてないですわ。」
「...」
「いや!寝るな寝るな!!
何時だと思ってるんだよ!」
しぶしぶ目を開け空を見上げると、太陽がキリエの真上まで来ていた。
「なんでもっと早く起こしてくれなかったんですの!」
「いや、なんか、起こしづらくてさ。」
キリエは急いで荷物をまとめ旅路へと戻った。
「魔法の話だけどさ。
もうちょっとどうにかならないか?」
「どういう意味ですの?」
「極端なんだよ。
俺の力を貸せばデカ過ぎるし、そうじゃなければ小さいしさ。
もっと扱いやすい大きさに制御できたりしないのかなって思ってな。」
「そうですわね...」
キリエは巨大な炎を出した。
「難しいですわね。しばらく特訓してみないとですわ。」
「今までは全力でしか魔法を使ってこなかったからか。
全力でやっと最低レベルの魔法だもんな。」
ボフッ
「おわ!」
アクリョーは飛んできた炎を華麗に避けた。
「やめろよ!効かなくったってびっくりするだろ!」
キリエはニヤリと笑っていた。
「あなたこそ、力を貸したり貸さなかったりできるなら、ちょっとだけ貸すとかできないんですの?」
キリエは再び巨大な炎を出した。
「んっ...んぐぐぐぐ....ふっ...」
炎は巨大になったり小さくなったりを繰り返した。
「無理だな。お前が頑張れ。」
ボフッ
アクリョーの体を炎が通過した。
「それにしても、俺って一体なんなんだろうな。」
「嘘つき変態ロリコン悪霊。」
キリエは即答した。
「そういうことじゃなくてさ。
...って誰がロリコンだよ!!」
「他は認めるんですのね。」
「違うけど!あまりにも身に覚えがないのが混ざってたからさ。」
「可愛い幼女に付きまとって着替えまで覗いていたのはどこの誰ですの?」
「いつの話だよ!
不可抗力だし1回だけだろ!」
「いや、そんな話じゃなくてさ。
俺の体がどうなってるのかって話だよ。
巨大な魔法を何発も撃てる魔力があるってことだろ?」
「そうですわね。自分じゃ使えないくせに。」
「っ...まあ、それに精霊術の方もよくわからないな。」
いちいち突っかかっては話が進まないので無視して議論を続けた。
「物との親和性とか信仰心とかなんとか言っていた気がしますわね。」
「そういやハバキがそんなこと言ってたな。
ハバキか...キリエは俺のおかげとして、あいつの精霊術が上達したのはなんでなんだろうな。」
「毎日特訓してたらある日突然って言ってましたわね。」
「もしかして"特訓"より"毎日"の方が重要なのかもな。」
「毎日?何言ってるんですの?
特訓が必要ないならなにが毎日なんですの?」
「あいつは昔っからあの格好で特訓してたって言ってたろ?
毎日一緒にいて、箒を大事にしていたからとかさ。」
キリエにはアクリョーが何を言い出したのか理解できなかった。
「付喪神って知らないか?」
「つくもがみですの?」
「ああ。俺のいたところでは物を大切に使っていると神様が宿るって言われてたんだよ。
まあ、本当に信じてるやつなんていなかっただろうけどさ。
ハバキが毎日大切に使ってきた箒に付喪神が宿ったとする。
俺がお前に力を貸すように、大切にしてくれたハバキにその付喪神、精霊が力を貸してくれたことでそのときから魔法が強くなったんじゃないかな。」
「じゃああの箒もあなたみたいにベラベラうるさく絡んでくるんですの?」
「いや、そこまでは知らんよ。
生まれたばかりで意思が弱いとか?
付喪神は、なんか、いたずらしたり幸せをもたらしたりとかそんなとこだった気もするし、はっきりとした自我まではないんじゃないか?」
「それで、その力を借りるのが精霊術なんですのね。」
「推測でしかないけどな。
そう考えると万物の魔力を借りるっていうのも付喪神...いや八百万の神か??
どう違うんだっけな...
たぶん八百万の神っていうのがどんなものにも神が宿ってるって話だったかな。
んで大切にすると付喪神が宿ってそっちの方が強力な魔力を持っていると。
霊的エネルギーと魔力が似ているのか同一のものなのか。
そう考えると俺の魔力が多いのもなんとなく頷けるな。」
アクリョーは1人で納得し、すっきりとした顔をしていた。
「それで、結局あなたはなんなんですの。」
「つまり俺は八百万の神よりもすごい付喪神よりもすごい...
神だな!」
「こんな神がいたら世も末ですわ。」
長々話に付き合ったのが馬鹿だったと後悔し、キリエは歩みを進めていった。
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