No.09 計画書下書き
フロリダ沖の海底六百メートル地点に巨大生物ダゴンの集団生息地がある事を、先行調査隊が確認した。
ダゴンの生息数は不明であるが、個体数は幼体・成体を合わせて百前後と推測。フロリダ及び日本への襲撃事例から通常兵器の効果は薄い、またはないと予測される。鱗及び皮膚組織の研究は進めているが、現時点で通常兵器を用いた効果的な対策は立案されていない。このためダゴン個体群の一部が三度目の上陸した場合、駆除ないし都市防衛は困難であると思われる。
また、現在我が国の立場は危機的だ。
フロリダ襲撃時の対応の遅れ、攻撃の失敗により、我が国の衰えを米国市民は危惧している。同盟国日本でも、在日米軍による攻撃でダゴンの駆除が達成出来なかった事から、在日米軍不要論が勢いを増している。
加えて中国及びロシアが、ダゴン討伐作戦の立案を表明。自らの存在感を世界に示し、勢力の拡大を図っている。現状、中露にダゴン撃破が可能とは考えられないが、米軍に対する不信感が広がる今、中露側に立つ国が増加する可能性は低くない。
何より米国市民の生命と生活を守るためにも、早急なダゴン根絶作戦が必要である。
現在軍内部にて考案されている作戦は、ダゴン生息圏に戦略核兵器600MT相当を配備し、生活環境ごと破壊するもの。通常兵器が通用しないダゴンであるが、その肉体は有機物と金属の複合体である事は判明している。融点は一万度程度であり、核攻撃であれば肉体に損傷を与える事は可能と推測される。加えて水中での核攻撃であれば、衝撃波の反射等の効果から、より大きな物理的衝撃も与えられるとの計算結果が出ている。
また陸上での核攻撃は米国本土の破壊と汚染を招くが、深海中での核攻撃であれば本土の汚染と破壊は生じない。水産資源への影響は大きいものの、補助金と定期的なモニタリング検査の約束により、世論の大部分は抑えられると考えられる。環境破壊及び生態系への悪影響は考えられるが、人命保護を優先する。
問題点として、ダゴン生息圏がフロリダ沖に留まるかが不明な事がある。即ち今回の攻撃でダゴンの換算な根絶が可能とは言えない点だ。日本にダゴンが上陸した事から、ダゴンの生息範囲は広範囲に渡る可能性は高い。ただし本作戦が成功すれば、今後ダゴンの新たな生息地を確認次第、本作戦の再実行により対応可能である事が証明される。
ダゴンの存在は、人類にとって脅威である。
この危険生物の駆除は人類の恒久的繁栄、及び安寧に必要だ。我が国の威信のみならず、世界の平和のためにも、本作戦には意義がある事を強調する。
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