No.08 研究成果報告書
先日出現した巨大海棲生命体……通称ダゴンに関して、人類が知る事は多くありません。ですがこれまでの遭遇記録から、判明した事、予測される事も幾つかあります。
それら情報について、一つずつ確認していきます。
まず日米に出現した二個体のデータから、体長が五十〜百メートルである事、海中が主な生息環境である事、陸上での長時間活動が可能である事、通常兵器による攻撃は効果がほぼない事が判明しています。
外見は、ずんぐりとした体躯をし、太い丸太のような四肢を持ち、少々短くて太い尻尾を地面に引きずっています。また顔付きがカエルに似ているとの目撃例が多数報告されています。エラの有無は外見から判別出来ず、呼吸方法は現時点で不明です。
生物学的分類は判明していません。鱗がある事から魚類という考えもありますが、陸上生活に適した形態から、古代に海中へと進出した両生類の生き残りとも言われています。巷で噂されているように宇宙生物なら、既知の分類学は通じないでしょうが……回収された鱗や体液からはデオキシリボ核酸、DNAが検出されています。彼等と我々が同じ起源を持つ事は、まず間違いないでしょう。
回収された生体組織は金属を多く含んでいますが、金属生命体と呼べるほどの割合は占めていません。高くとも一割程度であり、あくまでも水と有機物を主成分にしています。これら金属成分の生理上の働きは不明です。回収時点で生体組織は活動を停止しており、研究は難航しています。
特筆すべき点として、ダゴンの知能は非常に高いと予測される事が挙げられます。
フロリダに出現した個体は、一直線に州内の大学へと進行しました。都市部に生じた被害はダゴンの通行に伴うものであり、進路上の建造物への攻撃はありましたが、積極的な破壊行動は確認されていません。ですが大学校舎に対しては薙ぎ払う、踏み付けるなどの行為が目撃されています。軍の攻撃や障害物を無視して直進した事からも、フロリダ出現個体は大学への攻撃が目的だったと予想されています。
混乱状態の生存者の言葉であるため信憑性に欠けますが、大学破壊後にダゴンが笑っていたとの目撃証言が多数出ています。仮にこれが事実の場合、ダゴンの知能は魚類や両生類よりも、犬や猫、或いは類人猿に近い可能性があります。
このため安易な方法で対処した場合、学習・対応される恐れがあります。またこの情報が公表された場合、動物愛護団体などが軍による攻撃に反対する事も考えられます。ダゴンによる人的被害は甚大なため、民意の多数派になる事は考え難いですが、過激派による工作活動の可能性は留意する必要があるでしょう。
また、フロリダ州を襲撃した個体に関しては、強力な電磁波の放出も確認されました。発生原理は現在も不明ですが、電磁波によるサージ電流の発生により通信機器が破壊された事が、フロリダにおける通信障害の原因です。ダゴン活動地域では電磁波攻撃対策が必須でしょう。
なお横浜を襲撃した個体では、電磁波の放出は確認されていません。個体差、またはサイズ差に起因するものと考えられていますが、意図的に放出していなかった可能性も否定出来ず、現時点では詳細不明となっています。
以上が、現時点で判明しているダゴンの性質です。
積極的に人類を敵視しているかは現時点で不明ですが、極めて巨大な本種は歩行するだけで大きな被害を生みます。研究部門では今後も研究を進め、適切な管理が行えるよう解析を進めていきます。
(書類の裏に手書きの文字がある)
研究成果なし。軍プランで決定
学者は何時だって能天気なもんだ
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