第3話 初出社なのに電話対応してみた。 【リメイク版】

過去に戻りやり直しを始めて2日目。やり直しと言うより新たに女になってのスタートの様な気がする。




昨日はあれから寝るまで大変だった。何が大変って…………まずトイレ。


今まで在る物(竿)から生理現象による液体の排泄をしていた訳で、無くなったアソコを見た時のショックは思った以上に大きかった。


アレが無いってこんなに虚しいのか。もう立っては出来ないのか。泣きそうになった。




その次に大変だったのがお風呂。


スカートは脱げたけど、ブラを外すのに苦労した。後ろのホックに手は届くんだけど上手く外せない。


頑張ったけど最後は肩紐を外してブラ回して正面で外した。


あと思った以上におっぱいが大きくて下乳のあたりに当たるブラが少し痛いのが嫌に思った。


そして見ました。


えぇ、それはそれは自分の体なのに見惚れるぐらいで鼻血が出そうなぐらい、いい身体でした。


こんな身体の女性と前世?未来?いや男の時だった頃にしてみたかった。




後は明日の為に試しに着てみたスーツは割と楽だった。何が楽ってネクタイをしなくていい事だ。


スカートのスースーする感覚にはもう慣れるしかないんだろう。男の時だった経験からも女性はスカートの方が良く見えるのは俺だけの感覚じゃないはずだ。




あぁそれからTVを見たけど、懐かしいのなんの。映る物全て笑ってしまうぐらいだった。


携帯電話のCMでは勿論スマホなんて無くて、液晶画面が3センチぐらいのだし。


団子〇兄弟の歌が流行っているし、ポケベルなんて久しぶりに見た。


出てくる芸人も女優も俳優も若い若い!国民的昼のあの番組もやってるし。


涙が出そうなぐらい笑いました。




そして久しぶりに実家の自分の部屋で寝たけど、熟睡でした。いや~やっぱり実家はいいよな~。




そして今俺は自分の車で会社に向かっています。そうそう当時高校に通いながら車の免許を取って初出社4日前に新車が届いていたのを朝気が付いた。


懐かしい気持ちで18歳なのにベテランの様に運転して会社に向かってる。テンションちょっと高いかも。




さてさて会社に着きました。


ここで一つ気になる事がある。うちの会社は女性の営業マンを採用した事が過去も未来でも無い会社だった。


それが俺が過去に戻る際女性化したせいなのだろうが面接にも合格して採用になっていた。


もしかして「手違いでした。採用は出来ません。」等と言われる可能性もあるし、初の女性営業として何やら期待されてるかもしれない。


もし、不採用になるのならどうしよう…………不安になりながらも会社の入り口に入って行った。


受付には見慣れた顔の受付嬢がいた。佐藤京香さん。あぁ若いな~当時だと24歳ぐらいかな。


未来では美人な部類に入るはずなのに婚期を逃し40歳も過ぎても独身だった。




「おはようございます。今日からこちらの営業所に配属になりました黒沢優紀です。よろしくお願いします。」




勿論社会人として最初の挨拶はこんなもんだろう。


挨拶も終わり受付嬢の佐藤京香さんを見ると………固まっていた。




ん?俺、何か失敗したか?




「あのー佐藤さん。」




「……は、ハイッ!あっごめんなさい。え?私の事知ってるの?」




あっそうか初対面だった。一瞬ヤバイと思ったが名札を胸に付けているのを見つけてそれを指さして誤魔化した。




「改めまして受付を担当している佐藤京子よ、よろしくね。それにしても…………営業の新入社員が来るとは連絡は貰っていたけど、まさかこんな美人な子が来るなんて驚いたわ。でもこの社員証の名前の漢字間違いよね?」




そう言って俺の社員証を見せてくれたのだが…………【黒沢 優輝】となっていた。




あぁこれはもしかしてもしかするかな。『確認ミスでした。営業はさせられないから他の部署で』とか言われて事務とかに廻されるか俺も受付嬢とかやらせれるのかな。




「とりあえず二階の事務所に行ってね。山田所長が待ってると思うから。」




俺は社員証を貰いなれた階段を昇り事務所へと向かった。初出社だが何年も昇ったことのある階段だ。




ちなみに俺のいた会社は建設会社に現場で使う機械や部品、資材等幅広く販売して大きくなった会社だ。


販売する物は多岐に渡り、うちでは扱ってない物まで探してお世話する何でも屋の様な会社でもある。




その為、関係各社は1000件以上になる。最初の頃は覚えるだけでも一苦労なうえ機械や資材も新しい物がどんどん出て来て大変だった。


電話に出るのが怖くなった時さえあったぐらいだ。




懐かしさと新たに営業所として開設したばかりの建物が新築の匂いでいっぱいで少しテンションがあがっていた。


ドアの前まで来てノブに手を掛けてそのままいつもの様に入ってしまいそうになったが、何とか止めた。




コンコン




「失礼します。新人の黒沢優紀です。」




…………




……………………




………………………………ん?返事が無い。




俺はそっとドアを開けて中に入った。


あぁ、そうだ!朝は電話のラッシュなんだよなこの会社。


建設現場にいる監督からの電話は大抵朝早くか、夕方遅くに集中する。日中は資材会社や運送会社からの電話でラッシュとまではいかない。


部屋の中ではそんな電話ラッシュに対応している4人の営業マンが資料を見ながらとかしながら慌ただしくしていた。まだ誰も俺に気が付いてないみたいだ。


俺が座る予定の机にも電話が置いてありその電話がうるさく鳴っていた。この電話の音のせいで俺の声はかき消されたのだろう。ちょっとイラっとした。




新しく準備されたばかりの様な机には、ちゃんと電話機の横にはメモとペンも準備されていた。


過去の山田所長も俺の記憶通りに一番奥の机で下を向いて何やら見ながら電話で話している。




未だにうるさく鳴る電話。イラッ  




そこで俺はいつもの様に電話に出た。




「はい。アクティビティ 〇〇営業所の黒沢です。…………………………………………はい、いつもお世話になっております。はい、営業の桜田ですね。すいません。今、他の電話に出ておりまして………………………………はい、はい、その機械の説明でしたら運転席の後ろにある取説に書いてありますが…………………………………………えぇその初動操作の仕方は最初に操作パネルの右上にある赤いスイッチを押して頂ければ解除となり始動出来る様になります。………………………………はい、えぇまた何かお困りの事がありましたらなんなりとお電話ください。」




よし!終わった~。勿論電話をしながらメモに客先名や何処で使っているのかとか、電話をしてきたお客様の名前をメモに控えている。


後で現場に行った時に話しやすくする為にも何気に必要なんだよな。




『〇〇さん この前は大変でしたね。この解除の仕方わかりにくいですもんね。』とか会った事はないけど、一度電話で話した事があるってだけで対応が変わってくるんだよな~。




前屈みで机でメモを取っていた俺は元に戻ろうとして後ろに誰かいる事に気が付いた。


振り返るとそこには、山田所長と桜田さんが立って唖然とした様子で固まっていた。




ちなみに桜田さんは俺の16歳年上でいろいろ教えてくれた優しくも厳しい先輩だった。


当時は34歳頃かな?いや~若いな~それにまだ頭に髪あるし。




俺は固まっている二人の方に向かい




「おはようございます。今日からこちらに配属になった黒沢優紀です。よろしくお願いします。」




と新人らしく元気に挨拶した。




目の前の若い姿の二人を見て俺は面白くて自然に笑顔になっていた。




「き、君が黒沢優輝君?いや…………さん。そうだ。そうだった。女性だった…………何で男だと思っていたんだ私は…………」




混乱する山田所長。確か当時の年齢は50歳ぐらいだったかな?




この所長、実は3年後に会社を辞める事になるんだよな。それもお客さんの奥さんだと知らずにテレクラで知り合って不倫して、それがバレて大騒ぎになって相手の旦那さんにボコボコにされたんだっけ。




それで何故か固まっている桜田さんは放置して置いた。




「山田所長。私はどうすればいいですか?」




「…………え?あぁ、桜田さんに指導をお願いする事になっていたんだった。ちょっと桜田さん!桜田さん?」




山田所長もやっと桜田さんが固まっている事に気が付き揺すり元に戻そうとしていた。




「……………………うぁ、山田所長何です?何か言いました?」




「聞こえてなかったのか?これから君に指導を任せるから黒沢?黒沢さん?社員証の漢字は合っているのかい?」




とやっと確認された。




「いえ、私の漢字は優しいは合っているんですけど、紀の方は糸偏の方の漢字です。読み方は同じなんですけどね。」




「そうか。それは至急本社に言って訂正して貰おう。それでは桜田さん。黒沢さんの事よろしくお願いしますよ。いいですね?」




「はい!命に代えても。」




いや何を言ってるんですか?そんな面白い事言う人でしたっけ?




そして未だに何か納得出来ない様にブツブツと独り言の様に「なぜ男だと…………」を繰り返しながら山田所長は部屋から出て行った。多分業務課にでも行ったんだと思う。




そして残された俺と桜田さん。いや違った他にも2人いた。




鈴木直樹さんと林 博之さんの二人だ。




鈴木さんは、太っている。それは見事に太っている。そしていびきがとてもうるさい。同室に泊まった事があったが朝までとてもじゃないが寝られなかった。歳は当時だと26だったかな。




林さんは何て言えばいいだろう。兎に角多趣味で車もコロコロ代えるし、ジッとしていられないタイプの人だ。歳は確か28歳で…………確か娘さんが二人…………いやこの時はまだ一人目が産まれたばかりだったかな。




電話ラッシュも終わり余裕が出来たのか俺と桜田さんに近づいて来た。




「ほう。その子が新人の黒沢さんか………………………………かなりの美人だな。こりゃ~営業に回ったらすぐに成績トップになるんじゃないか。」と林さん。




いやいや美人な営業ってだけで数字取れる訳ないでしょ?『女、子供が現場に来るんじゃねーよ!』って現場監督に怒鳴られるのがオチだって。




「そうかな~?現場の監督とか怖いからすぐに泣きだして辞めるんじゃない?」と鈴木さん。




おい!鈴木さんよ。随分なめた事言ってくれてますね。10年もやってきた俺が監督怖くて辞める訳ねぇーよ。ってか俺は会社に入って3年であんたの成績抜いたからな!もう少し動けよ。




そう思ったが、今日からの俺は新人。新人らしく振舞おう。




「大丈夫です。体力には自信がありますから、ドンドン現場に行きます。」




心の中では悪く言っても顔に出さないのが営業マン。だが言葉では負けない。少し嫌味を込めて鈴木さんに向かって言ってやった。




「はぁー言われてやんの鈴木氏。」




「林さんもあまり鈴木氏をいじめない。全くどっちもどっちですからね?」


さすが桜田さん纏めるのが上手い。次期所長だもんな。




とりあえずそれから自己紹介を軽く受け、会社の中を桜田さん案内して貰った。まぁ、全部知っているから何も驚く事も無いし説明も半分聞き流したけど。




それからやはり初日と言う事もあり、仕事と言える事はなしで提出する書類の説明を受け必要事項を書いていた。




給料の振り込み先の銀行登録や自家用車の使用申請、自宅からの会社までの距離と簡単な地図の提出。




手書きで地図なんて久しぶりに書いた。過去のこの時代だとネットで地図検索して、出発地点と目的地入れて距離と時間出てきたらプリントアウトすれば終わりとか出来なかったから。




そ~言えば昨日のTVで携帯電話のCMやってたっけ。帰りにでも携帯買いに行こうかな。




ちなみに新人研修なんてされるより、する事の方が多かったから、勿論必要な書類も全部知ってる。




「桜田さん。車の保険の写しと年金の番号の提出はいいんですか?」




「…………あぁ~そうかそれもあったな。忘れてた。じゃ、それも書いて……………………って何で知ってる?!」




何で知ってる?それは…………言える訳ないでしょ?




「友人が会社に入った時に言われたと聞いていたので。」と実際は友人からなど聞いてもいないのだが嘘で通した。




営業マンは言葉でいろいろごまか…………乗り切るのが仕事です。はい。




「…………そ、そうか。」




まぁ、初日はこんな感じで時間が進み何年ぶりかで定時であがりました。いや~外まだ明るいな~。










さて、仕事が終わったら次は何をするかと言えばお買い物。




仕事中に携帯電話を買いに行こうと思ったのとは別に昨日寝る前にいろいろ計画していたのだ。




神様から貰った通帳には残高20万!




通帳の銀行名はゴッドバンク。実在してないから!何処で下ろせるんだよって部屋で一人ツッコミを入れたのは内緒です。表紙の裏に【どこのATMでも下ろせます】って書いてあった。




通帳記入も必要無し!




早速帰り道近くのATMに行ってみました。 




ドキドキしながらATMにカードを入れてみたら、暗証番号も不要らしく即金額指定画面が出た。




10と万って押して……………………おぉー普通にお金が出てきた。




俺はウキウキで財布にお金入れ買い物へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る