第22話

ミクのドリルが強烈な光を放ち、私たちの心を打ち砕くように迫ってくる。

彼女の暗黒の力に圧倒され、まるで動けないように感じた。

周囲の景色が歪み、闇に包まれる感覚が広がる。

リンとレンも、私と同様に力を失い、倒れ込んでいた。


「もう負けなのか……?」


私の心の中で諦めが広がる。

仲間を守りたかったのに、私たちは力尽きてしまった。

ミクの冷酷な笑顔が目の前に迫り、絶望感が私を包み込む。


「お前たちが勇者だと? 本当に笑わせるわ。ここで終わりよ!」


ミクの声が響く。その瞬間、ドリルが振り下ろされる。

私の心は締め付けられ、運命を受け入れざるを得ないと感じた。


「さようなら……」


その時、背後から急に風が吹き抜けた。

目の前の空気が揺らぎ、何かが近づいてくる。私は一瞬振り返った。


「待たせたわね!」


そこに現れたのは、ユカリだった。

彼女は長い髪をなびかせ、力強い眼差しを持って私たちの前に立った。

彼女の存在が、暗い空間に光をもたらすようだった。


「ユカリ……!」


思わず声を上げる。彼女の姿を見て、私の心に希望が湧き上がる。


「貴方たち、まだ諦めないで!」


ユカリの言葉は力強く響き、私たちの心に勇気を与えた。

彼女は双剣を手に取り、ミクに向かって挑戦的な視線を送る。


「お前が戦うのは、私だ!」


ユカリが叫ぶと、彼女の双剣が光を帯び、空間を切り裂くように輝く。

ミクは驚いた表情を浮かべ、ユカリの姿に一瞬気を取られる。


「何!? あなたがここにいるなんて……」


ミクの声が一瞬驚愕に変わる。

その隙に、ユカリは私たちの前に立ちはだかり、盾となるように構えた。


「テト、リン、レン。私がいる限り、あなたたちは負けない!」


ユカリの言葉が私たちの心に響く。

力強い意志が感じられ、私たちは再び立ち上がる。


「ユカリ、私たちも戦う!」


私は叫び、仲間たちも力を合わせて立ち上がる。

再びドリルを握りしめ、ミクに立ち向かう決意を固めた。


「お前たち、まだ抵抗する気か!」


ミクの声は冷たく響くが、今度は恐れずに立ち向かうことができる。

ユカリの存在が、私たちに勇気を与えてくれる。


「行くぞ!」


ユカリの指示に従い、私たちはミクに向かって突進する。

ドリルが光を放ちながら、私たちの力が一つになり、ミクの力に立ち向かう。


「私の力を見せてあげる!」


ユカリが叫び、彼女の双剣が光を纏いながらミクに迫る。

ミクは冷酷な笑みを浮かべながらも、明らかに不安そうな表情を見せる。


「この私が、負けるわけがない!」


ミクは力強く反撃を試みるが、ユカリの攻撃はその予想を超える速度で迫る。

私たちも続けて、全力で攻撃を繰り出す。


「リン、レン、行け!」


私は仲間を鼓舞し、彼らも力を合わせてミクに攻撃を加える。

光が反響し、空間が振動する。


「これが私たちの力だ!」


私たちの力が重なり合い、ミクに立ち向かう。

彼女の冷たい笑みが消え、明らかに焦りが見え始める


「お前たち、どうやってこんなに強くなった……!」


ミクの驚愕の声が響くが、今の私たちにはその言葉が力になる。全力で、仲間のために戦う覚悟を持つ。

「絶対に、負けない!」

私たちの叫びが、ミクに向かって響く。闇の力に立ち向かうため、私たちは全てをかけて進む。


ユカリ、リン、レン、そして私の4人が一緒になり、

ミクに立ち向かっている姿を見て、彼女の表情に変化が生まれる。

最初は冷酷で無慈悲な笑みを浮かべていたミクの顔が、

次第に驚きと感動に変わっていくのが分かった。


「何……!? どうやって、あなたたちがこんなにも強くなったのか……」


ミクの声には動揺が含まれていた。彼女のドリルが光を失い、攻撃の手を緩める。

私たちが力を合わせている姿が、彼女の心に何かを響かせたのかもしれない。


「私たちは、一緒に戦うことを選んだ。仲間として、助け合って……」


ユカリが声を上げ、その言葉は私たち全員の思いを代弁していた。

私たちの力が集結し、互いに支え合っている様子は、まさに絆そのものだった。


「……これほどまでに、力を合わせられるなんて。私にはできなかった……」


ミクの瞳に、これまで見せたことのない感情が浮かぶ。

彼女は一瞬、自分の過去を思い出しているかのように見えた。

『彼女もかつては仲間と共に戦った勇者だったのだろう。』

しかし、何かの理由で孤独を選び、闇に堕ちたのかもしれない。


「その力、私も認める……」


ミクの声には、どこか力強い決意が感じられた。

私たちの努力と絆が、彼女の心を動かしたのだ。

彼女はドリルを地面に突き立て、戦う意思を示さなくなった。


「あなたたちには、未来がある。私は……もう、負けを認めるわ。」


その言葉に、私は一瞬驚いた。強大な魔王として君臨していたミクが、

まさか私たちに負けを認めるとは思わなかったからだ。

しかし、彼女の瞳には、過去の自分を取り戻すかのような光が宿っていた。


「本当に、勝ったの……?」


リンが信じられないように声を漏らす。レンも目を丸くしていた。

私たちはお互いの顔を見合わせ、驚きと喜びが混ざり合う。


「はい……これが、私たちの力です。仲間の絆で、未来を切り開くために戦った結果です。」


私はそう答え、心からの安堵感が広がった。私たちは勝ったのだ。

ミクに勝利し、未来への扉を開いた。


「あなたたちの旅路が、素晴らしいものでありますように。私は、もう戦うことはないわ。あなたたちが進む道を、祝福する」


ミクの言葉には、かつての自分に対する懺悔が含まれているように感じられた。

彼女はドリルを引き抜き、私たちの前から姿を消した。


私たちはその場に立ち尽くし、何が起こったのかを理解しようとしていた。

勝利の感動が心に広がり、同時に新たな冒険への期待が芽生えてきた。


「これから、どうする?」


レンが問いかける。私たちは勝利を収めたが、まだ道は続いている。


「次は、私たちが新しい世界を築くために進んでいくの。仲間と共に」


ユカリの言葉に、私たちは頷いた。

今までの苦難を乗り越え、共に戦った絆を大切にしながら、

新たな未来へ向かう決意を固めた。

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