バラエティーニュース

名久井悟朗

朝のニュース

『朝のニュースです──』

 彼女は一人、薄暗い室内で菓子パンを齧りながら無表情にテレビを見ていた。

『──連続殺人犯の初公判で語られた「人を殺してみたかった」という犯人の犯行動機、これ普通の人間ならありえないでしょこれは?』

 習慣的につけているテレビからニュースキャスターの無責任な声が響く。

 ついさっきまで動物園にライオンの赤ちゃんが生まれたと嬉しげに話していたはずが、まるでリモコンのスイッチを押すように話題が変わった途端に驚愕と恐怖の声色で語るキャスターの神経も普通とは言い難い。

「『人を殺してみたかった』で本当に人を殺すものなのかな?」

 そう彼女は独り言を口にした。

 みんなそれを悪い事と言うけれど、テレビでは毎日のように事故や災害、ともすれば殺人で人が死んだと報道している。

 人は毎日死んでいて、殺人も世界中で起きている。

 悪い事なのにいつも誰かが誰かを殺す。

 幼い彼女にはそれが理解できなかった。

 わからないなら誰かに聞こう。

 そう思った彼女が食べ終えた菓子パンの包みをゴミ袋に放り込みテレビを消した時、テレビでは人気のパン屋さんを紹介していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年12月2日 18:00
2024年12月3日 18:00
2024年12月4日 18:00

バラエティーニュース 名久井悟朗 @gorounakuoi00

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画