Chapter 019 逃走中
そろそろマカロニが偵察に出てから一時間が経つ。
その間、周囲の警戒と望遠鏡を使って洞窟の周囲にいる黒ゴブリンの動きを見ていたが、拠点の見張りが定期的に移動したくらいで大した動きは無かった。
「ただいま~」
「───ッツ!」
すぐそばでいきなり声がしたので、思わず声を上げてしまいそうになるのを必死で堪える。
みると周囲を警戒していたヒルメイも驚いている
まさかこんな間近に来るまで音も気配も感じないなんて…
「ごめんね、びっくりさせちゃった?」
あぁ、ホントだよ……心臓飛び出るかと思った。
「もう少し手前で声掛ければよかったね~」
こんな状況でわざとなら相当なイタズラ小僧だが、マカロニはそんなことする奴では無い……。
頭を軽く小突いてマカロニは、洞窟の中の状況を簡単に説明し始めた。
洞窟は入口が大きく開いていて、そのまま緩やかに降り坂なっており、通路は段々と狭くなっていくが、しばらくするとすごく大きな空間が拡がっていてそこに黒ゴブリンの巣があったとのことで規模は五百体近くいるかもとのこと。
また他の魔物がいなかったため、普段お目にかかる緑色のゴブリンと違って排他的な傾向にあるかもとのことと、洞窟の中には更に奥が続いているらしく驚くべきことに奥の通路から鉄鉱石を掘り出し、大きな空間に運び出し、そこで武器や防具を作り始めているそうだ。
これは恐らく脅威度判定は相当高くなるなぁ……。
情報としては充分だ。
早くギルド本部に報告しないと。
マカロニの説明を受けて、すぐに俺たちは迂回しつつ山村に避難を呼びかけた後、村の伝書鳩を飛ばして冒険者ギルドに状況報告することを決め、移動を始めようとした。
『ゴゴゴッ──ッ』──地鳴りが起きて、潜んでいた岩陰の大岩が傾き下に転がり始めた。
危うく巻き込まれて下敷きになりそうになったテラフは必死に飛び退きギリギリで躱した。
すぐにヒルメイを目で探すとマカロニのエネルギー系スキル【糸】で巻き取り引き寄せられ、難を逃れていた。
見つかった!
洞窟の入口の方で何やら騒いでいる。
次々と松明が灯っていく。
続いて笛の音が鳴り、山裾側の方でもいくつか松明が灯るのが見えた。
これはまずい!
囲まれてしまう。
「これは村には戻れないね~そのまままっすぐ下に降って、強行突破かな?」
マカロニが、最善策を提案してくる。
俺とヒルメイもその提案に賛成だ
その間にもヒルメイは、機動性と防御に特化した
「準備できた~? それでは、元気にいってみよう!」
おいおい何のんきなこと言ってんだ?
結構ピンチだぞ!?
俺は思わずツッコみたくなる衝動に駆られたが今はそんな猶予はない。
駆け足で降り始める。
「ウオオっ──!」
しばらく降ったところで、テラフは雄たけびをあげ、下から最初にあがってきた黒ゴブリンと真正面から切り結んだ。
『ガキィィ──ッ』──片手斧に伝わる感触が“硬い”相手を坂を降りながらの勢いのままの突撃、黒ゴブリンを両断するつもりだった一撃が受け止められ、一瞬背筋に冷たいものが走る
突撃を受けた黒ゴブリンは、テラフの斧を防いだものの後方へ吹き飛ぶ
吹き飛んで体勢の崩れている黒ゴブリンにいつの間にか回り込んだマカロニが最小限の動作で急所を細剣で貫き絶命させた
しかし、止めを差したマカロニの元に間髪入れず二番目に近づいてきた黒ゴブリンの刃が迫る。
マカロニは左手に持っているダガーで受け流しつつ右手のレイピアを数手、繰り出して黒ゴブリンを沈める。
ヒルメイは先ほど作った。礫人形を前方に出し、黒ゴブリンを受け止めつつ、火属性の自然精霊とコンタクトし、素早く前方及び俺やマカロニの更に前方から接近しつつある黒ゴブリンに撃ち込み焼き払う
俺も初撃を受け止められ狼狽したもののその後は、黒ゴブリンが持ち得ない片斧術を取り扱ったテクニックにより、追い込み目の前の黒ゴブリンに瀕死の傷を負わせ、黒塵となり消え失せたが、戦っていておかしいところに気が付いた!?
魔物を倒すと普通ドロップされる色見石が落ちない。
目の前の黒ゴブリン五匹を何とか倒し、閉じられていた逃走経路が再び開く。振り返ると拠点側の方から黒ゴブリンは十数匹降り始めているがまだ距離がある。
一方、麓側の残りの松明の動きは漫然としており、俺たちの正確な位置を掴みきれてないようだ。
(……コッチ)
うん?
(……コッチニ早ク)
頭の中で片言の声が響く……。
先に立っているマカロニや、後ろにいるヒルメイにも同様に聞こえている素振りを見せる。
(崖ノホウ、切レ込ミノアル所ニ、飛ビコンデ)
はいぃぃ~~~~~っ!?
いったい何なんだこの頭に響く声は?
【念話】にしては、三人同時に聞こえているし……。
通常、一対一で事前に意志疎通してから接続しないと繋がらないはずなのに。
そもそもいきなり、崖に向かって飛べって……。
到底、聞ける話ではないだろ?
とテラフが色々と考えている間に、マカロニは心に響く声の主に向かって返事しながら崖に向かって走り出す。
「うん、分かったぁ!」
いやいやいや、待て待て頼むっ!
とりあえず冷静になって俺の話を聞いてくれ、なっ?
制止を呼びかけた。が、聞いちゃいねえぇぇぇっ!
「とぉぉっ!」
とぉぉっ! じゃねぇよ、飛び込みやがったぁぁ!
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