配信ゲーマー「神」になる

田中子樹@あ・まん

第0話 かつて天才と呼ばれた男


 5歳のころ。父親が小学生のころにやっていたコントローラーを手で操作するコンシューマー系の古いゲームがクローゼットの奥から出てきた。


 動くのか試そうと父親と対戦型のゲームで遊んでみた。息子に当時のことを自慢したかったのだろうが、父親にすぐ勝てるようになった。


 地元の小学校を卒業後、eスポーツ特待生として、eスポーツ系主体の私立中学校に入学した。VRモーションキャプチャーやスリープ型のフルダイブ機器などが主流だった時代。すぐに頭角を現し、入学して一年もたたないうちにeスポーツ系で学校のトップになった。


 15歳でeスポーツのTPS部門……主人公の後方視点で操作するシューティングゲームで世界大会に出場したら世界第3位に入賞した。


 各メディアでも取り上げられ、若き天才の出現と報じられ、世間からは盛大に賞賛された。だが、国内のゲーム業界関係者から、きびしいコメントが相次いでネットの記事を賑わせた。


 自己中心的でチーム行動ができない。勝利条件を無視して相手を倒すことだけにこだわる。そして仲間を平気で犠牲にして自分を守るという救いようのないクズなプレイヤーだと後ろ指をさされた。

 

 そのことがきっかけでゲームから遠ざかった。ふつうに勉強して、ふつうの高校、大学へ進学し、中堅クラスのふつうの会社に入社した。


 その数年間でゲーム市場は、革新的な進化を遂げた。


 ──黒い筐体ブラックボックス

 

 約10センチ角の正方形をしたハード。アメリカの軍事企業がゲーム業界に参入して、わずか1年で開発されたそのゲーム機器は、世界に衝撃をあたえた。ハードに手をかざすだけで、脳とゲーム世界をリンクさせる。そして頭のなかで、思い描いたとおりにキャラクターを自由に操作できるという画期的なもの。そのため、世界中のハードが一新されるという事態がおきた。


 代わり映えのない日常にうんざりしたオレは、ひさしぶりに退屈さをまぎらわせるため、あるゲームをはじめることにした。


 











 そのゲームが、オレの人生を大きく変えるとはつゆとも知らずに……。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る