第7話 幼馴染(非日常一番)×幼馴染(日常一番)
After
丸太型の可愛い船に乗って、おとぎの国を眺めるアトラクション。
……そう聞いて、このアトラクションに乗ったのだけど。
「ちょっと!? これ、どんどん上って行ってるんだけど!?」
途中も、何度か落差のあるところをザブンザブン落ちて空恐ろしかったっていうのに。
これはいったい、どういうことだ。これに乗ろうと誘って来た幼馴染……隣に座る老女を見れば、悠然とした顔で一言。
「そりゃあ、高いところから一気に落ちて、ザッパーン! だからねぇ」
こいつ!
「アンタ! 今並んでる列はそういう一切無しの方って言ったじゃないか!」
「そんなの嘘に決まってるだろ。というか、他の列が見当たらないのに、よく気が付かなかったもんだ。不注意なアンタが悪い」
「ちょっとぉおぉぉぉ!?」
子どもの頃から変わらない、ニヤリとした笑みが返って来た。……口元の皺の所為でね、より性質が悪くなってんだよ!
「いいじゃないの。アンタは昔から冒険しなさ過ぎなんだよ。人間、いくつになっても冒険しないとね」
「この年でこんな絶叫系乗ったら死ぬ!」
「死にやしないよ。アンタもアタシも、心臓には医者のお墨が付いてんだから。……そら、そろそろだ!」
「ぎゃ、ギャアアアアァァアアアァァアアアアアアアア!」
いい加減覚えてろ、という柄の悪い言葉は、悲鳴と一緒に滝つぼへと落ちてった。
アンタと居ると、いっつもこう!
※※※
Before
「ねええええ! 今日はただの川下りって言ってたじゃない!」
「馬鹿だねぇ。この川って言ったら急流下りって相場が決まってるんだよ」
というか、救命胴衣を着せられてる時点で普通気付きそうなもんだけどね。相変わらずどっか抜けてんだよね。そこが可愛いんだけど。
ザブザブとボートが急流を行く。ああ、なんて楽しい! スリリング!
「ひ、ひえぇぇええ……!」
「アンタは冒険を避けすぎ。もう少しアドベンチャーに生きないと!」
「ばっかじゃないの!?」
アンタといると、いっつもこう!
なんて叫んでるけどさ。
私が誘うと、いつも何だかんだついて来る。
ちっちゃな頃から、いっつもそう。
それってつまり
私は、口の端はニヤリと上げた。
「好きだからよねぇ」
「なにが!?」
自覚無いんだと私が笑うのと、ボートが更に揺れるのはほぼ同時だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます