それぞれの日常(咲)1 上
今回は咲です。
上 朝
下 昼間〜放課後
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勉強会の次の日の朝、私達はいつも通りの朝を迎えていた。
「香織いくよー」
私の声を聞いた香織が短い返事を返し、急ぎ気味に玄関までやってきた
「遅いよ香織」
「ごめん、靴下履き間違えちゃって──」
香織の珍しいミスに少し驚きはしたが、その後は特に中身ない会話をしながら学校に向かう
私達の通っている学校は地元から少し離れているため電車通学だ。最寄りまで歩いて20分程かかるが私にとって香織と話せる貴重な時間。
歩きながら時おり横目で彼女を見てしまう
やっぱり香織は綺麗だなぁ。
天使?いや、女神かな?
あー。思いっきり抱きしめたい
「…みたいなの、って咲、きいてる?」
「あ、あぁごめんごめん少しぼーとしてた」
完全に見惚れてた…
私は話題をかえるように口を開いた
「そういえばさー、今度球技大会あるでしょ、香織クラスリーダーなんだって?」
「うん、そうだけど。そういう咲もでしょ」
「うん、まぁね。今年も勝つからよろしく」
「何言ってるの、咲。勝てないのに勝てるなんて言って…後で恥ずかしい思いするよ」
「勝手に言ってなさい、私、香織との勝負は絶対手は抜かないから」
「それは私も」
私は基本的に香織に甘い。しかし勝負は別、手を抜くことはありえない。初めて会った時から、今までも、そしてこれからも。
⭐︎⭐︎⭐︎
20分なんてあっという間で、もう駅に着いてしまった。ここで香織とは一旦さよならする。
香織とは普段は仲が良いし、一緒にいることが多い。
中学までの友人ならその仲の良さは誰もが知っていることだ
だが、高校では違う。高校にはいってからは学校での接点はあまりない、三年間同じクラスになったことはなく一緒にいる友人も違う。
高校ではお互いのために仲が良いことを隠しているのだから当然のことだった。
「着いちゃったね、それじゃ放課後にいつものとこで」
「えぇ、それじゃあまたね、天ヶ瀬さん」
香織に苗字で呼ばれるたびにむず痒くなってしまう。
⭐︎⭐︎⭐︎
私が電車に乗ると自分と同じ制服をきた人が3人ほどすでに乗っていた。その中の1人が私の方へやってきた
「おはよー、今日も可愛いねぇ」
「おはよ雫、頼むから朝からおじさん化しないで」
「おじさん化言わないで、私は思ったこと口にしただけで冗談言ってるわけじゃない」
「なんて厄介な」
結城雫、私が高校生になって初めての友人、セミロングの黒髪を一つに結った可愛い系の子。3年間一緒のクラスというのもあって、香織を除けば一番仲が良い。
「ね、咲。」
「ん?どうした?」
いやな予感がするな…
「今度の球技大会終わったらクラスの行ける人みんなで打ち上げするんだけど、咲も来ない?」
やっぱりかぁ、私は毎年この手のものは断っている。香織と一緒にいたいのもあるけど、それだけじゃない
「雫、わかってて聞いてるでしょ?私行かないよ。どうせ男子が誘え〜ってうるさいかったんでしょ」
「あはは、やっぱりダメかぁ。ごめんね。男子もそうだけど咲人気だから女子からも誘えって言われててさ。私も来てくれるなら来て欲しかったしね」
「ごめんね、あ、雫たちだけと遊ぶなら全く問題ないからね!」
「そんなことはわかってるよ」
その後、他愛もない話をしながら学校に向かった
校門をくぐり、玄関で靴を履き替える
「雫、今日の1限なんだっけ?物理だっけ」
「うん、物理。今日は演習だね」
移動教室じゃなくてよかったー。三年間ずっと4階のクラスってどう考えてもおかしいよ。
「って今考えたよね?私も同じこと思ってた。この階段が憎たらしい…」
「心読まないでっ!?、びっくりしたぁ。一言一句違わずに当てるとか怖すぎだよ!」
香織ならもしかしたら私に同じ事できるかもしれない。今度試してみるか
おしゃべりしていたらあっという間に4階に着いた。
そのまま教室に入ろうとした時、ふと隣のクラスを見た。入り口には何人かの後輩ちゃんが何かを見にきていた。
また、別クラスの人もそのクラスの前を通る時、教室内をチラ見しているのがわかった。
どうしてか、なんて聞かなくたって分かりきっている。みんな香織を見にきているのだ。
「相変わらず人気だね〜」
私はつい呟いてしまった、まぁこれくらいなら大丈夫か
「ねぇ、咲〜。あなたも人のこと言えないからね?……というか、咲の方が接しやすい分より顕著な気も」
「ん?最後よく聞こえなかったけど、私はそこまでじゃないってば。元気なだけだし!」
私は照れ隠しのようにそう言って、教室へ足を踏み入れた。
――そして、教室の外で聞こえた雫の小さなひとりごとは、私の耳に届くことはなかった。
「……はぁ、ほんと、分かってないんだから。
咲、気づいてないのかもしれないけど──
さっきの視線の数、あれは八雲さんだけじゃない。あなたも、見られてたよ」
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次回の更新は日・月曜日
・私の友達(雫視点)
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