第12話 未来はまだ白紙のまま

「これからどうしたいの?」

最近、両親からそう聞かれることが増えた。決して責めるような口調ではないけれど、その問いにどう答えていいか分からなくて、いつも言葉に詰まる。「どうしたいか」と聞かれると、まるで自分が何も考えていないような気がして、不甲斐なさを感じる。


未来を想像しようとすると、目の前が真っ白になる。どこに住むのか、どう生活していくのか、両親がいなくなったとき自分はどうなるのか――それを考えるたびに、不安が大きな壁となって立ちはだかる。


白紙の未来が怖い理由は、答えが見つからないことだと思う。答えを出せない自分が無力に思えて、まるでその不安が私の価値を決めてしまうかのような気がする。でも最近、そんな未来に対する考え方が少しだけ変わり始めた。


あるとき、相談支援事業所のスタッフに、「未来のことを一度に決めなくてもいいんですよ」と言われたことがある。その言葉は、まるで目の前の霧が少し晴れたように感じられた。私は、全部を一度に考えすぎていたのかもしれない。


今、私ができることは、「未来を白紙のまま受け入れること」だと思う。白紙だからこそ、何でも書き込むことができる。その余白を少しずつ埋めていくために、小さな行動を積み重ねていけばいいのだと気づいた。


たとえば、住む場所については、福祉住宅や支援付き住宅を選択肢に入れることができる。経済的な問題については、障害年金や生活保護、その他の支援制度を調べておくことができる。一人で考え込むのではなく、誰かに相談して一緒に考えるという方法もある。


「未来を考えることが怖い」という気持ちは、今も完全には消えていない。それでも、今の自分にできることを一つずつ積み重ねていけば、不安の中にも少しずつ道が見えてくるのではないかと思う。


白紙の未来は、怖いものではなく、可能性を秘めたキャンバスだと思えるようになりたい。そして、そのキャンバスに描くのは、自分だけではなく、両親や友人、支援してくれる人たちの力を借りながらでもいいのだと、今は思える。


「これからどうしたいの?」という問いの答えは、まだ持っていない。でも、答えを探しながら一歩ずつ進むこと自体が、私にとっての未来を描くプロセスなのかもしれない。


白紙の未来は、少しずつ形を変えていく。私はその白いページを恐れずに、少しずつ色をつけていきたいと思う。どんな色で埋められるかはまだ分からないけれど、それを考える自由があることが、今の私にとっての救いだ。

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