第26話
「お兄様」
まあ、それは泡沫の夢なのだがな。
全員のそう仰天する目が俺の胸元に集中し、そこから咲羅が「恐かったですわあ」という吹き出しが見えそうな感じで飛び出す。
そして由貴にガシッとしがみつく。
「彼女が妹って……あの彼女が立花の末姫ってことか?」
「いや、その前に彼女は『橘斗真』の元妻だって言ったぞ?」
「……ってことは、SNSのあれ?」
「しっ!」
局内の幽霊騒ぎ。
あらわれる幽霊は『橘斗真』の死んだ元妻と言われていた。
死んだ理由は分からなかったが、最近になって当時『橘斗真』が主役を務めたドラマの関係者が続々と幽霊を見たあと軒並み不幸にあっている。
幽霊の復讐。
彼らは復讐されるほど何をしたのか。
探れば探るほど当時のスタッフたちの醜悪なやり口が露呈する。
一番の被害者である『橘斗真』の死んだ元妻に同情の声があがっていたが……。
『橘斗真』の元妻は死んでいない。
しかもあの立花財閥の会長と3人の息子が目に入れてもいたくないほど可愛がっている末娘。
最近局内で頻発している人事異動と番組降板の理由をここにいる者は漏れなく悟った。
「誠、久し振りだな」
「そうだな、由貴」
由貴は笑い声をあげるたびに幾人もが顔を青くしていく。
「両親は会いたがっているよ。お前が会わせる顔がないなんて寂しいことを言うから」
「悪い……」
「いいんだって、咲羅を守るために離婚したって俺たちは分かっているから」
ただなあ、と困ったように由貴が溜め息を吐く。
お前、役者になったほうがいいんじゃないか?
「お袋がお前に会えなくて淋しいと泣くからさ、親父が許さんって怒って直々に出張るってさ」
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