剣と魔法の世界で僕が考える最強になる

時雨白

第1話 僕が考える最強の定義

「僕は、思うんだよ。最強は強ければいいわけではない」


 全体真っ白な空間で、僕は目の前にいる絶世の美女、女神に、僕が考えている最強の定義について話している最中だった。


「カッコよさも大切なんだ。これも単純な話ではない。人間慣れるものでね、常にカッコいいとそれが普通になってしまい特別感がなくなってしまうんだ」


「はあ、そうなんですね」


「だからこそ、僕は思ったんだ。最強にはギャップが必要なんだってね。普段は弱く目立たない存在が、実は最強でした。


 クゥーー!カッコいい!!想像するだけで脳が冴え渡る!!だから。そういった能力を追加でつけておいて」


「いや、能力は一つまでと言いましたよね?」


 女神は呆れたような目でこちらを見てくる。


 僕たちは今、世界を救うためにもらう能力を決めている最中だった。


「チチチ、これだから二流女神は、本当に取説読んでる?」


「に、二流」


 僕は二流女神からもらった能力付与取扱説明書を取り出す。


「この説明書には、能力の付与にはコストの概念があって、二流女神が言う通り馬鹿でも分かる強くて扱いやすい能力にしようとすると一つが限度というだけだ。


 どこかのゲームや漫画のように、扱い辛くなるなど、デメリットを追加すればコストは下がる。


 この説明書を見る限りでは、余裕で作れるはずだ」


 僕だって無茶振りを言っているわけではない。てか、無理なお願いをするとか普通にカッコ悪い。


 それは僕が考える最強の定義からズレる行為だ。


 故に、二流女神が、これで能力を考えてと渡してきた取説から、現実的に作成できる能力を考案しているのだ。


「言われてみればできるかもしれませんが、扱いやすくて強い能力の方がよくありません?」


「はあーーー、これだから二流は分かっていない。そんな能力の強さで無双したところで意味がない。


 そんなことをしたら、メガネが本体とか言われるように、能力が本体とか言われる羽目になる。


 それが最強に思えるか?


 否だ!


 最強は、己が努力によって身につけた力であることが大切なんだ!


 楽してパワーアップなんて論外!それは最強への侮辱!!」


 これは僕の最強の定義において何よりも大切なことだ。


 最強とは、楽して得られるものではない。


 命を削り、狂気を支配して、地獄のような努力をして、積み重ねた力こそが、あらゆることに揺らぐことがない力になり、その力こそが最強に相応しいのだ。


「故に、メインの能力は習得が難しくて扱いづらいもので構わない。その代わりに扱えるようになったら不可能を可能にできるものがいい。


 例えるなら、本物の8割程度だが固有能力を再現できるとかな」


 やはり最強には、不可能の文字は相応しくない。能力を使ってでも何かしら可能性を感じさせる存在であることは重要だ。


「それと転生の際に、有利になるような家に生まれるのはやめてくれ。普通もしくは劣悪な環境でも構わない。逆境ごときで最強は屈しないからな」


 最強とは、どのような環境でも成り上がるもの。これを証明する為にも、名門家に生まれるとかそんなのはいらない。


 普通な場所もしくは、少し劣悪な環境スタートする。


「ハイハイ、分かりましたよ。」


 女神が呆れたような表情をすると、パネルみたいなものが現れてポチポチ倒していく。


「変身、能力、制限、使いづらい、不可能を可能にする、習得難易度極ムズ、生まれ。劣悪な環境、逆境」


「おい、二流女神。まさかめんどくさくなって自動生成しようとしていないか?」


 AIに文章生成をさせる時に、必要な条件を入力する感じで単語を読み上げていたことに不信感を抱き聞く。


「え、そうですけど」


「おいーーー!なにやってるじゃーーー!!」


 僕は跳ね上がり急いで二流女神の場所まで向かう。


「今すぐ辞めろーー!!自動生成の精度は低いと取説にも書いてあるだろうがーーー!手動生成しろやー!!僕に世界救わせるんじゃないのか!!」


「いやーー、君を能力なしで送っても世界救う予知が出てるし、ぶっちゃけ能力はオマケみたいなものだし、君の性格ならなんとかなるでしょ!」


 ド三流女神の表情からはめんどくさいから早く終わらせたいという気持ちがもの凄く伝わってくる。


「ふざけるなよ、このド三流女神がーー!」


 僕はド三流女神の蛮行を阻止するためにタッチパネルのキャンセルボタンを押そうとするがすり抜けた。


「ザンネーン!これは高位存在しかさわれませんーー!」


「こいつーー!」


 ついに本性を見せた女神を僕は睨みつける。


 最初の方に、世界を救うために僕を殺したとかいっている時点で、ド三流だったのだ。


 魔法と剣の世界で、僕の最強になる夢を叶えられると言われて過大評価してしまった。


「生成完了と、それじゃあいってらっしゃい!」


「覚えておけよ、この恨み必ず晴らしてやるからなーー!!」


 そうして僕は、世界を救うために転生したのだった。

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2024年12月27日 13:05
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剣と魔法の世界で僕が考える最強になる 時雨白 @sigure1226

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