第36話 いざ、異界へ
着替え終えて俺たちは再び合流する。
「ダンジョン探索だってのに、お前と春香の格好はなんだよ」
大和が俺とクリキチを交互に見た。
「由緒正しき学校指定のジャージだ。防御力と耐性ハンパねーぞ」
「そうっす。特別な装備じゃなくても、これ着てればバッチリっす」
俺たちは胸を張って答えた。
この装備、案外バカにならないんだよ。
ゲームでのコイツの性能は、防御こそ他の装備に劣るが、全属性耐性付与と防刃、防撃、防突、オマケに身体強化まで入る代物だ。
キャラクターの基礎ステータスを上げたら、こっちのジャージ着た方が強いなんてこともある。
さらに最終まで強化すると、ラスボスの即死攻撃すら耐える伝説のジャージになるのだ。
だから今回のダンジョンなら、わざわざ防具を購入しなくてもこのジャージで行けるのだ。
クリキチの場合は、たぶん俺とお揃いってのもポイント高いんだろう。
えらく上機嫌だ。
「ほらー。やっぱりジャージの方が良かったじゃない。ライラ!」
バトルドレスに身を包んだエリーゼが悔しそうに言う。
「いえ、王族であるエリーゼ様がジャージ着てダンジョン探索は、その対外的にNGだと王宮から言われまして。我慢してください」
ライラも近衛騎士としての鎧を着て、バッチリ決まっている。
さもありなん。
ダンジョン探索とはいえ一応、人前に出るからな。
それなりの恰好しないとダメなんだろう。
そもそもお姫様のダンジョン探索をよく王宮が許したと言える。
ゲームでも不思議だったけど、裏で何やら色々根回しをしてるのかもしれない。
「それじゃ全員そろったし、行くか」
大和が音頭とって歩き出す。
受付カウンターに向かい、全員で生徒証を見せる
「はい。たしかに。向かう先は『彩色の森』ですね。初心者ダンジョンとはいえ、十分に気を付けて探索してくださいね。『彩色の森』は二番ゲートからですよ」
受付のお姉さんがにこやかに言ってくる。
「はい。十分気を付けます。それじゃどーも」
俺たちは受付を済ませて二番ゲートに向かう。
「隠しダンジョンに向かうって言わなくていいの?」
エリーゼが受付を気にしながら言ってくる。
「大丈夫だ。そもそも隠しダンジョンがあるかどうかは、行ってみないと分からない。ざっくりと調べてみたが、どうも未発見のダンジョンっぽいな」
実際には確実にあるし行けるのだが、行き方が特殊過ぎてこの世界じゃまだ誰も足を踏み入れていないようだ。
「見つからなかったら適当に森を探索して帰るし、言わんでもいいだろう」
俺はそう結論付けた。
俺たちが二番ゲートに向かうと、駆け出しの探索者や、俺たちと同じ学生らしき探索者が「異界門」の開門を待っていた。
俺はそびえる門を見上げる。
石材でもなく鉄材でもない特殊な素材で作られた門には、複雑な彫刻が施されている。
この世界と異世界を繋ぐ装置。
ゲームでは背景の一部でしかなかったが、こうして実際に見るととてもデカい。
ゲート近くの天井には電光掲示板が設置されている。
そこには『フォレストワールド行き 10:25 開門』と点滅していた。
時計を見ると十時二十分だ。
そこから適当に待つこと五分後。
涼やかな音楽が鳴り、電光掲示板に『開門』と表示される。
『フォレストワールド行きのゲートが開きます。白線の内側でお待ちください』
アナウンスが流れて門の彫刻が光り輝き、閉じられていた門が開きだす。
両開きの門が完全に開き切ると、虹色の膜が張った景色が見えた。
電光掲示板に『転送開始』の文字が表示された。
『開門完了。転送開始。慌てず落ち着いてお通りください』
アナウンスに従って俺たちは歩き出す。
目指すは『彩色の森』がある異界フォレストワールド。
俺は虹の膜を潜り抜けるのだった。
若干の浮遊感の後、先ほどの二番ゲートに似たような場所に出た。
ここはフォレストワールドという異界に立つダンジョンセンターだ。
ゲートエリアから待合エリアに向かう。
「えーっと、どっちに行ったらいいんだ?」
俺はキョロキョロと周囲を確認する。
ゲームじゃほぼこの辺はダイジェストで、門をくぐったらダンジョン探索パートの画面に移ってたからな。
よーわからん。
「あ、矢印あるよ」
薫瑠が天井に掲示されてる矢印を示した。
「あっちね! 行きましょう!」
俺たちは矢印案内に従ってセンターの三番出口を出る。
そして目の前に鬱蒼と茂った森の入り口が現れた。
「ここかぁ。初めて来るけどワクワクするぜ」
大和が不敵に笑う。
俺は鞄から資料を取り出す。
「えーっとたしか、この『彩色の森』の第三エリア内、薔薇が咲いた袋小路が隠しダンジョンの入り口のようだな」
ゲームじゃ結構簡単に着いた場所だが、実際にはどれくらいかかるだろうか。
モンスターに後れを取るような事はないと思うけど。
「じゃあ、そこまで行ってみましょう」
エリーゼが意気揚々と歩き出す。
俺たちもその後に続いて、深い森に足を踏み入れるのだった。
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