第012話 年始とオジンボ歌

オジンボさま~ おげんピーですか~

ピーべ すピー の こずピー

ピーるく ひピーる まら ひピーつ みつピーました~

まら は みつピーます

かみさま の よう に とてピーやさピーく~

ピーし は まら に はピーし ます

く~じ~ピー~ま~せ~ピー~よ~ お~んな の こ でピー

さ~ピー~し~く~ピーったら~ はピーし に きピーすね

ピーか~ たピーん~

それピーは まら おたピーりしピーすっ オジンボさま~

え~りす~


深夜の丘の上で、夜空を眺めながら一人の幼い少女‥‥‥では無かった、それなりの年齢であるが幼女体型のエルフの女性エリスが大岩の上に腰かけ、股座の上にオジンボ像を乗せながら歌っていた。


夜という事もあり、その声は透き通るように大地に広がっている。


「サーシャちゃんが作った歌、すごく良いなぁ。ボクにはそういった才能無いから羨ましいよ」


「そうだな。ところどころ言葉の意味が分からない箇所もあるが、何というか優しい歌だな」


そう感想を述べたのは、少し離れた所で焚き火を囲みながらエリスの歌を聴いていたオフィーリアとシロウである。


『あはははは………』


二人の感想に微妙な表情を浮かべたのは、替え歌を作った張本人のサーシャと歌の真実を知るマコトである。

どうやら、この世界において『まら』に隠語の意味はないようである。


「まぁ、伯母上の美声のおかげもありますけれど」


リリスは、我が事のように無い胸を無駄に張った。

焚き火の明かりが下から照らされて、彼女の胸の二つの突起物は程よい影を得て、いつもより主張を増している。


だが、残念なことに、それを一番見せたいシロウは隣に座っており、その視線の先はエリスであった事から、ちっぱいぴんぴんを彼が拝むことは無かったのである。


そして、歌い終わったエリスが満面の笑みを浮かべながら焚き火の所まで戻ってきた。


「流石に『4月1日の年の始め』とはいえ、丘の上の夜は冷えるのぅ」


そう言って、エリスは股座の上に再びオジンボ像を乗せ、焚き火に向かって両手をあてた。

なお、この世界は4月1日に新しい年がカウントされる。誤植でないことに注意が必要である。


「あ、そうそう。小娘サーシャよ、良い歌をありがとうのぅ」


サーシャの本当の意図を知らないエリスは、満面の笑みを浮かべながら言う。


「気に入って貰えて何よりだわ。心を込めて考えた甲斐があったというものね」


そう言って苦笑いのマコトの隣で得意顔ドヤがおを決めたサーシャであるが、当然、嘘である。

だが、ある意味真実でもあった。

『邪心』を込めて、下ネタ入りの替え歌を作ったのは間違いないのであるから。


「おお、そうじゃ。お主もオジンボ教徒にならんかや?」


「いやぁ、それは遠慮しておくかな。というか、私、正教徒だし」


「そうか、それは残念じゃ」

「にしても、正教………聞いたことのない宗教じゃのぅ」


1024歳のエリスは、顎に手を添えながら首を傾げた。


ギクッ!


(ヤバっ。ここが異世界だってことすっかり忘れてた)


(大丈夫だよ。僕たちの故郷の一部地域だけで信仰させれる宗教ってことにすれば)


(なるほど)


サーシャは、マコトとひそひそ話を終えると、こほんと咳ばらいをして口を開いた。


「私たちの故郷の一部の人だけが信仰している宗教だからね」


「おぉ!そうなのかや。わしと一緒じゃのぅ」


エリスは、何の疑いも無く受け入れ事なきを得たのであった。


「おっ!そろそろ夜が明けるぞ」


シロウは立ち上がると太陽が昇る方を指差し、それにつられて全員立ち上がって指を差す方向に視線を向けた。


「よし。大岩の一番高い所からオジンボ様と一緒に見るのじゃ」


「ちょ。それ私が、マコトと一緒にやろうとしてたのに」


二人は我先に、大岩の方に向けて走り出す。


「そこまで高さに差はないだろ………」


苦笑するシロウに、他の面々リリス、オフィーリア、マコトも同意するように笑う。


こうして、パーティ一行は新年の朝日を存分に堪能したのであった。

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